しゅんかみ

ブリッジ・オブ・スパイのしゅんかみのレビュー・感想・評価

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
4.7
 オープニングから、映画の面白みに溢れた、それでいて静かなシーンにグイグイ引き込まれた。
 男と、その男を追う男と、その男の仲間、というのが、エキストラも多い映像なのに観てるだけで分かる上に、その他のエキストラの動きにも緊張感があるあのサスペンスシーンはすごい。
 スピルバーグに限らず、老練な監督って観客を映像で道案内するのがうまいというか、サラッと映画に入り込まされる気がするんすよね。


 なんとなくの前情報しか聞いてなかったから、トム・ハンクスがスパイ的な人なのかと思ってたんだけど、彼は逮捕されたスパイを弁護する事になってしまった弁護士ドノバン役。
今作はこのドノバンの仕事人っぷりに泣かされてしまいましたね。いい感じに老けてきたトム・ハンクスにバッチリハマってたと思う。

 FBIに逮捕されたソ連のスパイであるアベルは、アメリカ国民からしたら敵国のスパイであり、「まあ極刑っしょ!」的な扱いをされてしまっている中、ドノバンだけがアベルを普通の依頼人として扱い、正当な扱いで司法で裁く事が冷戦においてアメリカの態度を示す事である、という、いわば至極もっともな事を言う。
彼が最高裁判所で演説するところでクライマックスになっても良いくらいな気がするけど、このアベルの裁判はまだ物語の半分。

 ドノバンがアベルを救った事が、さらなる展開に転がっていくんだけど、こういう話最近なんかで観たなと思ったら、『イミテーション・ゲーム』を思い出した。あれも、暗号を解読することよりも、その他の決断の方がより歴史に大きな意味をもたらすというところが面白かったんだけど、この映画もなんとなく似ている気がした。

 ちょっと実話ベースにしては、というか実話ベースなのにというか、主人公がヒーロー然としすぎてるうえに、帰国してからの話なんかは出来過ぎに感じなくもない。
 でも、やっぱりあの橋のシーンは、それまでの会話で積み重ねたドノバンとアベルの互いへのリスペクトを忘れない2人の関係性…あれはグッときましたね。
 派手なシーンこそほとんど無いですが、存分にスピルバーグのサスペンス描写を堪能できる映画だったと思う。