しゅんかみ

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結のしゅんかみのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

チームヒーローものというジャンルをまた更新してしまったんじゃないか…
気持ち悪くてグロくて悪趣味なものが映ってるのに、同時に美しくて愛があって、めちゃくちゃ感動してしまった。
ジェームズ・ガン、おめでとう。

以下、ふせったーに書いたもの。ワイスピと連続で見たことにより生まれた雑記。

!ワイスピのネタバレあり!

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『スースク』と『ワイスピ』、超大作映画でアウトローがチームで戦うという共通点以上に感じた性質の違い。

どちらが正解というわけではなく、シリーズとしての立ち位置とか作品の目指す方向性の違いなんだけど、作品内における「死」の扱いが決定的に違って面白かった。

ワイスピの方は悪役の死すらかなりボヤかして描く。ましてや無辜の市民の死などは絶対に描かない。あんなに市街で爆発、衝突、破壊が行われているのにほぼ死を映さない。
そしてそれはメインキャラクターについても同様で、次々に死んだと思われたキャラが生き返りチームに合流する。(これはこれで面白さにも繋がっているので、良い悪いでは語れない部分)

対してスースクは、序盤から死に満ちている。前作のメインキャラクターだと思っていた奴まですぐ死ぬ。さらに主人公たちも容赦なく「敵」を殺すし、ボヤかさずド直球に画面で捉える。そしてそれが不謹慎すぎるギャグにもなっている。
無辜の市民も普通に死ぬ。スターロという怪獣は、逃げ惑う市民を踏みつけ、ビルを破壊したら容赦なくその中には人がいて、ビルから飛び出して死んでしまう人も映っていた。
正直ここまで死を正面から描く巨大怪獣映画は観たことがない気がした。『ゴジラvsコング』はとても面白い映画ではあったけど、確実にいたであろう何万人もいる死者のことは徹底的に映さなかった。

特にこのスースクは政府の失敗の象徴であるスターロという怪獣により市民が犠牲となっており、製作時期的に無関係とはいえコロナ禍による政府の失策で実際に人が死んでいる現状を思うと、むごたらしいとは言え誠実な描き方であると思った。

考えてみるとワイスピはブライアン役のポール・ウォーカーの死という悲劇を抱えているが、ブライアンは劇中設定では生きており、(今回のラストシーンもブライアン絡みでグッとくるものがある)徹底的に死をギャグ化しないようにしているようにも見える。
そしてそれはファミリームービーに成長しきったシリーズとして、興行という面からも要請されるものなんだと思う。

ジェームズ・ガンのスースクも、死をギャグのように露悪的でグロまみれに描いてはいるものの、その本質にあるのは最底辺と思われた人物達がなけなしの勇気と愛で困難に立ち向かうという普遍的な物語で、R-15になってもこの描き方でいくと決断した製作側もすごいと思う。
これでこそジェームズ・ガンをMCUから引っ張り出した価値がある。

今日たまたま続けて観た2作を、あえて比較して個人的にどちらが好きかと言われれば圧倒的にスースクなんだけど、ワイスピはワイスピですごいところに行きつつあるシリーズなのでかなり楽しめた。過去のシーンとか新鮮で良かったし。

ガワはワイスピの方が「リアル」でスースクの方が「ファンタジー」に見えるけど、その実わりと真逆で、改めて映画という芸術作品の面白さがわかる2作品でしたね(まとまっているようでまとまっていない結び)