しゅんかみ

騙し絵の牙のしゅんかみのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
3.9
予告の「騙し合い」的な要素も無くはないけど、実は「面白い芸術をどうやって世に出して行くか」という話だったように思った。
というか自分も途中までその騙し合い的な要素に引っ張られてしまったので、フラットな視点でもう一度見たいくらい。

小説でも映画でも、面白いもの・芸術的なものであると同時に商売として成立させる必要があるが、そのために創作者と読者・観客をつなぐ存在が、編集者でありプロデューサーなのだと思う。
今作はその立場の登場人物達がいかに作品を届けたのか、という部分に面白さがある作品であり、その点において新鮮だった。

豪華キャストもハマっており、特に池田エライザは本人のパーソナリティと役柄が重なって見えて、ナイスキャストだと思った。

とはいえ、そこまで前のめりにハマれなかった部分もあり、主にそれはコメディシーン。
面白げなシーンで音楽が笑わせたいと思われる箇所で途切れたりする演出が少しクドかったり、なかなかギャグにドライブ感がなかったのが引っかかった。
序盤、テレビのワイドショーでこの映画の登場人物を語る場面とかも、小林聡美の演技は良いけどまず「こんなワイドショーある?」ってところとかが気になってしまったり、そう思うと登場する架空の雑誌とか本とか、どこか本物っぽくなさが気になってしまった。
話の面白さで引っ張ってくれればスルーできたかもしれないところだったかもしれないけど、それにはちょっと馬力が足りない感じ。

とはいえエンターテイメント映画としてかなりの高レベルだし、コロナ禍後に観る映画としてもなかなか味わい深いものもあり、全体としては楽しめました。