カテリーナ

エレファント・ソングのカテリーナのレビュー・感想・評価

エレファント・ソング(2014年製作の映画)
3.7
タイトルのエレファントソング
初見では頭に無かったが本編が始まって
暫くして
デヴィッド・リンチ監督の『エレファントマン』を思い出した それは
本編のマイケル演じるグザヴィエ・ドランが「象だけが涙を流す唯一の生き物なんだ」と
呟く台詞を聞いたからだ
幼い頃の父親との思い出のモノローグで
父親が象を撃ち殺す それを見た幼いマイケルの悲鳴
倒れた象の目から涙が流れる 硬く乾いた皮膚の上を灰色の液体が流れる落ちる

『エレファントマン』では
人間とは思えない奇形として産まれ
見世物小屋で生き恥を晒し
虐げられて生きてきたが
あるひとりの医師によって
人間の尊厳を取り戻す話しだった

失踪したローレンス医師は
マイケルのただひとりの理解者だった
彼に会う迄はマイケルは孤独だった
無理矢理共通点をあげればそこだろうが
このふたつの作品の明確な繋がりを
説明する事はできないが
重ねてしまう自分がいる

マイケルの担当医のローレンスが失踪し
グリーン院長が何らかの事情を知ってると思われるマイケルから話しを引き出そうとするも
言葉巧みにはぐらかし
まるでゲームを楽しむように
グリーン院長を翻弄する
それを心配そうに見守るピーターソン看護師長も何か曰くありげだ
ローレンス医師の失踪の謎は途中で
読めてしまった為 驚きはなく勿体無かった

全ての事実が明るみに出てから
雪景色に覆われた湖の畔りでふたりは
ただ、黙って寄り添う
小さいベンチに腰を下ろし
グリーン院長の肩に頬を寄せる
嫌な素振りも見せず静かに微笑む
でもふたりの視線が交わることは無い
交互に相手に視線を当てるだけ
この絶妙なすれ違いが
この二人の関係性を物語る

人生の黄昏時を迎えるふたりの
交わらない視線同様に
再び起きてしまった事に嘆き 抱き合って
お互いを慰めたいはずなのに
それを許す事の出来ないしがらみが
目に見えない力でふたりを覆っている
キャサリン・キーナーとブルース・グリーンウッドが
微妙な心情を表現して素晴らしかった

雪景色の冬の木 に実る赤いカンボクの果実
に似た
ラストショットが胸に残る
カテリーナ

カテリーナ