シズヲ

奴らを高く吊るせ!のシズヲのレビュー・感想・評価

奴らを高く吊るせ!(1968年製作の映画)
3.6
本場アメリカへと戻ってきたイーストウッドの西部劇。どことなくマカロニの色を感じる独特の乾いた空気が印象的。その上で派手な銃撃戦ではなく「西部開拓時代の司法」をテーマにしているのが面白い。私刑行為や見世物同然の公開処刑、そうせざるを得ない時勢など、時代の歪みがありありと描かれている。単純な痛快作にはせず伝統に一石を投じるスタイルは後のイーストウッド監督西部劇に近いものを感じて興味深い。

イーストウッドのかっこよさで一応フォローしてるけど、それでも展開は終始に渡って地味。特に盛り上がりもないまま結末まで向かってしまう。かといって最後までグイグイ引っ張っていく作劇的な凄みがある訳でもない。後半に話が微妙に脇道へと逸れたり、テーマに対して曖昧な終幕を迎えたり、色々と中途半端な部分も多い。それでもイーストウッドが法や倫理をテーマに西部劇を作ったこと自体に価値を感じる。最終的に行き着くのが『許されざる者』であることを考えると尚更。
シズヲ

シズヲ