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SHARINGのmingoのレビュー・感想・評価

SHARING(2014年製作の映画)
3.9
sharingは良い悪いを論ずる映画ではなく、いち個人が一側面だけあるわけじゃないように、ある物が見えなくなったり見えてた物が見えなくなったりする映画的に様々な側面を兼ね備えた可能性に満ちた映画だった。311を題材にした作品はフィクションノンフィク問わず創作されてきたが、内面を描く倫理的タブーに果敢かつ真摯に挑み、批判を恐れず何より「映画」を撮ろうという気概が心地良いのである。

本作は語り出すとキリがないので、これから観る人におすすめ点を述べておくと、人物どアップにおける執拗な持続と立教大学新座キャンパスで展開される大学内構造を上手く利用した接近である。よくレビューで共感した!とかあるのはそもそもがおかしくて、他人の経験を理解することは不可能であり、それでも他者に接近すること、経験のsharing(共有)への欲求・葛藤こそが人間が人間である肯定的な理由だからこそ揺さぶられる。

また不穏な風のサウンドが全編に渡って印象的だが、監督本人が台風の日に窓を5センチ開けては2センチ戻したりして音にも拘った仕様である。その他冒頭のラインホールドニーバーの言葉や、虚偽記憶が作り出す映像、黒沢清も題材に用いているドッペルゲンガーの扱い方、予知夢による入れ子構造式の展開など111分間息をつく暇もないので覚悟が必要かも…

トークショーでは篠崎誠監督は黒沢清と対談形式の「恐怖の映画史」という本で趣味嗜好を知っていたが人物が相当に面白かった。わざとピンボケを採用したり、商業ベースじゃなく作家監督なのは言うまでもないが、ライムスター宇多丸との深い映画術きけたのが何より最高の一言につきる。

「酒飲む人間が馬鹿なんじゃなくて、酒飲むことによって人間て愚かだなと再確認するんだよ」ていう言葉はグッときた。エモいとか感傷的て言葉が存在したり言いたくなったりするのは飲む場が人生においてそれだけ大事だったりするからなんだろう。

舞台挨拶で登場した樋井明日香さん実物顔ちっさ綺麗すぎてうっとりし、個人的には「セトウツミ」にも出演してる鈴木卓爾も見逃せなかったし、絶対劇場で観るべし!DVDじゃ伝わらない2016年の傑作邦画!99分の短縮版もラストが全く違うし、もはや違う作品にみえるみたいなので機会があればぜひ観たい!
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