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アベンジャーズ/エンドゲームのsanbonのレビュー・感想・評価

5.0
鑑賞を終えてしばらく経つが、今でも余韻がずっと残り続けている。

なんだこれは?

これが11年の歴史が幕を閉じた瞬間に訪れる感覚なのか?

何を伝え、どんな事を書こうかと考えを巡らせては、また涙腺が緩んできてしまう。

こんな映画体験は生涯初めてだ。

まあ、それもそうだ。

この作品は、約11年分22作品の積み重ねの頂点にして、その重みがあるからこそ真価を発揮する映画であり、映画というカルチャーが世に生まれてからそんな作品はこれまで一本として存在していなかったのだから。

また、ここまでの作品量と10年以上という歳月を経ても、オリジナルキャストの降板劇がハルクのエドワードノートンとローディのテレンスハワードの2人のみで乗り切れたのも実に感慨深い。

この壮大なるチャレンジを、大方の予想を遥かに上回り成功してみせたマーベルスタジオには感服する他ない。

昨今、MCUに続かんと様々なユニバース作品が誕生してはいるが、そのどれもがいまいちなんだか垢抜けない。

事実、往年のモンスターを復活させるダークユニバースや、スターウォーズのスピンオフですらシリーズの存続が危ぶまれているのを見ると、複数の作品を最終的に一つに集約するという事が、どれほどの険しい道のりなのかは想像に難くない。

漫画や海外ドラマ等もそうだが、視聴者は無慈悲な搾取者であり、人気がない=即打ち切りの厳しい世界なのだ。

もちろん、先駆者であるMCUであっても、いつ道を踏み外すか分からない状況だった訳だが、それを見事に成し遂げるどころか、無難な成功に留まらず更なるチャレンジを繰り返しながら、唯一無二の存在感を今作では示してくれたのだ。

かくいう自分も、アイアンマン1作目公開時からユニバースの話は認知して各作品追ってはいたが、当時は面白い事考えるなぁ程度でさほど期待もしていなかった。

実際、無印アベンジャーズ も初回の映画館で鑑賞したが、その時は途中で寝落ちしてしまった。

しかし、作品を重ねる毎にMCUの特色が明確になり、世界観にも濃度が増していくと同時に、単独作にも他作品がクロスオーバーしだした辺りからは、真剣にのめり込んでいったのは今振り返るととても懐かしい思い出なのだが、この「作品を重ねる」という事がどれだけ難しい事か。

もちろん、どんな作品にもとてつもない結末が予め用意されその始まりを迎えるのだろうが、それをお披露目出来るかは、その作品が辿った道のりが全てであり、今作はそのどれもがかけがえのないものであったと、物凄い説得力を携え知らしめてくれた。

まず、前作インフィニティウォーで起きた最大の悲劇。

もちろん、今作でもその重くて冷たくて淀んだ空気感を引きづって始まる…のかと思いきや、今作の特に前半部分は予想の何十倍もコミカルなのである。

あるキャラクターに関しては誰もが予想だにしない姿で現れるし、驚く程視聴者を普通に笑わせに来るのだ。

今思えば、アホに振り切ってもおかしくないキャラが多く生き残ったのも、この空気感を今作ではまず作りたかったからなのかもしれない。

いや、これまでの作品を通してアホに振り切ってもおかしくないキャラに仕立て上げた、と言った方が厳密には正しいか。

ストーリーの肝としては、サブタイトルですら予想合戦が白熱する程考察されまくっていた為大抵は大枠通りなのだが、そんな誰もが気になり「考えを巡らせるであろう部分」の視界の外から変化球を投げつけ、番狂わせをさせにくる懐の深さがまたまた流石だなーと、笑わされたのに感激していた。

また、前作で大願成就を果たしなんの未練も無くなったサノスを、更に凶悪な存在へと変貌させ再び立ちはだからせる展開も凄く良かった。

今作エンドゲームは、当初インフィニティウォーPart2となる予定で、サノスが2作に渡りメインヴィランを勤める事は最初から決まっていた訳だが、既に前作で圧倒的な力の差と熾烈な闘いは描き切ってしまっており、なおかつ今作ではアベンジャーズ の目的は消えた仲間を取り戻す事へと変わり、サノスも脱け殻のような状態から始まる訳で、どうやって最終決戦に持ち込むのかと思っていたら、なるほど…そのサノスなら正に最凶だわ。

そして始まる戦いの時。

こんなに泣ける一大決戦…いや、ヒーロー映画今まで観たことがない。

インフィニティウォーから丁度ほぼ一年。

ずーっと待ち侘びていた瞬間が訪れてからは、ずーっと泣きながらヒーロー達の勇姿をずーっと眺めてる。

カッコいい映像が続いてる筈なのにそれを見つめる目は涙で濡れているという、今まで生きてきて経験した事のない状態。

この映画はほんとズルい。

他の作品などで起きた悲喜こもごももここに来てごちゃ混ぜちゃんぽんしてくるから、これまでの蓄積された感情すら引き合いに出される始末だ。

こんなに充足感に満ちたとても短い3時間は味わった事がない。

あと、これだけは言っておく。

誰が生き返るだ誰が死ぬだなんて全然皆当たってないよ?

ていうか、運営のミスリードにまんまと騙されちゃってるよ?

そんなに気になるなら一刻も早く劇場で自分の目で確かめてきなさい!

最後に、これまで数多くの予想、考察、果ては感想等躊躇なく読み漁ってきたにもかかわらず、驚く程ほんの些細なネタバレさえも踏まずに本日鑑賞に至れたのは、この作品に対して全てのレビュアーが誠心誠意の敬意を表したが故だと思うばかりであり、自分もかくもそうありたいと心から感じる一作であった。

さあ、これで全ては終わり、新たな種は蒔かれた!

次のスパイダーマン:ファーフロムホームから続くフェーズ4には、どんな驚きと感動が待つのかしばし胸躍らせ待つとしよう。
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