娯楽の極み

アベンジャーズ/エンドゲームの娯楽の極みのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

MCUの集大成となる今作、時系列は置いといてシリーズ通して見てきた身としては大満足の終幕でした。とはいえ、完全なるハッピーエンドとは言えないことも事実です。人類は救われて良かったけれど、アベンジャーズが払った犠牲は大きかったですね。結果、2人の主人公のうち片方を失うことになり、ナターシャも命を落としました。


ドクター・ストレンジが語った1400万分の1の勝てる方法、それは人類の勝利には間違いないけれど、ナターシャとトニーを失うという未来でした。人類を救うためにはこれ以外に方法がないことがわかった上で、その作戦に導いたのはある意味最もキツイ役割だったのかもしれません。あるいは、インフィニティ・ウォーで「タイムストーンと仲間の命、天秤にかけたときオレはタイムストーンをとるぞ」と発言していることから、仲間の命よりもストーンの行く末を案じたのかもしれませんね。

言葉にしてしまうと想定してる未来にたどり着けないという表現も、トニーが最後の最後に「自分を犠牲にするほかない」と判断するまで待つ必要があったことがわかります。そうしなければ、別の未来へとつながっていたということです。

覚悟を後押しする形で微かに指1本を立て「これが1400万分の1」と表現していたあたり、ドクターストレンジにとっては予定調和だったということがわかります。
トニーはトニーで、なんとなく覚悟していたかのような表情を見せるところが物悲しく、それまで頑なに自分と自分の守るべきものを優先していた男が覚悟を決めた瞬間でした。

考えれば、アイアンマン3でペッパーにスーツを与えたことや、モーガンがオモチャにしていたメットもペッパーに渡す予定だった最新スーツの一部だとすると、今後の自分を想起していたのかもしれません。
MCUの開幕となる「私がアイアンマンだ」のセリフが、エンドゲームの最後を締めくくる形で持ってくるあたり、やはり主人公はトニー・スタークだったのだと再認識できます。

一方のロジャースは、意外な方法でサノスと互角以上の戦いを繰り広げました。ソーの武器であるムジョルニアを軽々と持ち上げ、雷まで召喚し攻防を演じてみせたのです。

エイジオブウルトロンでムジョルニア持ち上げゲームが行われたシーン。ハルクですら持ち上げる事が出来ないムジョルニア、当然ロジャースも持ち上げることができませんでした。しかし、よく見るとロジャースが触れたムジョルニアは微妙に動いているんです。ロジャースの性格から考えて、ソーの顔を立てたかあるいは、力を誇示してスポットを浴びることを避けたとか、そういったことが理由と考えて良いと思います。ソー自身も、それに気づいている表情をしていますがあえて話題に上げることはしませんでした。

今回その伏線が回収されています。なぜムジョルニアが「重たくて持てない」ように描かれているかというところですが、実はムジョルニアはそもそも重量の概念に縛られたものではなく、ムジョルニア自身が使用できる人間を選んでいるんです。今までは「ソーだけが選ばれし者と判明していた」ということですね。

存在自体が絶対正義であるロジャースが持ち上げられない理由は本来ないと考えてよく、ソーもそれは同時に見抜いていて、土壇場でムジョルニアを預けるに至りました。もう1人の主人公であるロジャースがムジョルニアを持って戦う姿は、ソーやハルク、ヴィジョンやワンダなどの特殊能力を持ったキャラクターに肩を並べるほどの強さを見せつけてくれました。ロジャースファンとしてはかなり熱い展開でしたね。

終盤に至って、ロジャースが自分の人生を歩み、老人となって待ち合わせ場所に現れるシーンがあります。それだけ見れば感動的ですが、劇中で「ストーンを元の時間軸に戻せばタイムパラドックス問題は起こらない」としつつも大きな問題が残ります。

過去にロジャースが戻ったとして、その当時のロジャースも同時に存在していることになります。となると、ペギーと結ばれるべきはどちらのロジャースなのかということ。

時間軸の違う同一人物が存在できるのは、ロジャース自身がインフィニティストーン回収作戦で体験しています。そうなると、未来のロジャースがペギーと結ばれてしまったら、過去のロジャースはどうなるのか。

ここからは僕の仮説で、結論として未来ロジャースとペギーは結ばれていないという説を推します。未来ロジャースとペギーがとある家でダンスをしているシーン、よく見るとペギーが泣いているんですよね。
未来ロジャースがペギーとの関係を明言しないことから察するに、未来ロジャースはペギーに真実を話した上で、かつて交わした「ダンスの約束」を果たしたのみで、その後ペギーの元から去ったのではないかと。

そして、過去ロジャースの台頭がわかっているからこそ、自分自身は隠居し静かに暮らし、戦争が落ち着いた時代に改めて戻ってきたのです。自分の人生を歩んでいたという表現からはそうした考えにも至ります。
そうすると、ループしたような形になりますが過去ロジャースと未来ロジャースが表面的には同時間軸に存在しないことになり、ストーンを戻し終わった正しい時間軸上でのタイムパラドックス問題も解決しますよね。劇中で「過去を変えても未来は変わらない」とされていることからも、残念ながら2人はひとときの幸せを掴んだのみと考えて良いと思います。

これまで利他的な考えしか持っていなかったロジャースの最初で最後のわがままが、これまた利他を意識した上でのものだったというのが泣かせます。まあ、その間に過去ロジャースは氷漬けになっていたかもしれないので、本人を差し置いて何してんだ、と取れなくもないのですが、これも本人なので多分良いんでしょう。

でも、バッキーは自分のもといた時代に戻れなくて良かったんだろうかとも思ったりします。これも、ロジャースが幸せなら構わないという親友ならではの考えだったんでしょうか。

ともかく、賛否両論あろうとは思いますが僕としては大満足した上で終わってしまったという喪失感もあります。取り敢えず、ファーフロムホームを待って指折り数えていきます。