きむきむ

プリデスティネーションのきむきむのレビュー・感想・評価

プリデスティネーション(2014年製作の映画)
4.6
これだからSFは辞められない!

このジャケットにも書いてありますが、日本版は「時空へ逃げても追い詰める」とかでかでかと書いてあって、このコピーは逆効果だろとか思って観たのですが、今となっては本筋を悟らせない良いコピーだなと感じました(笑)

ネタバレを避けると何も言えなくなりそうで、興味があったら観てと言う感じですが印象に残ったところだけ…

前半はひたすらに2人の登場人物による話が続きますが…
これが既に上手い!
1人が昔話をする訳ですが、昔話のシーンー言わば回想ですが、そのシーンの作り込みが異常です。実際に話しているシーンでは(場所がバーというのもあり)カメラは近く、ただただそのまま映しているような印象を受けます。
しかし回想のシーンは俯瞰、遠巻き、部分接写など、本当に話されてる事をそのまま想像したような、つまりは会話の部分だけリアリティがあり、それ以外の描写はやや曖昧な印象を受ける訳です。
そして他人事のように話を聞いているとラストには「うわああああ」となるんですねぇ(笑)

個人的にはこの映画は「ある人間を愛してしまった事で、抜け出す事の出来ない運命に陥った」話だと感じました。
『Predestination』は運命、宿命という意味ですし、ハインラインの原作は『輪廻の蛇』。更に作中には「卵が先か、鶏が先か」など多くのヒントはあったと思います。しかしそれでも簡単に騙されるんですよね。
何故かと言うとこの話「普通は絶対にありえない」んです。それはSF設定がとかでは無く、そうなるだけの大きな力が必要なんです。それがSFとは切っても切り離せない"愛"という概念です。
SFではしばしば愛というものは解明するとこのない謎であり、時にどんなシステムをも凌駕しうる大きな力を持っています。
それがこの作品でも遺憾無く発揮されていて、気持ちの良いくらいどうしようも無く納得してしまう要因となっているように思いました。

この結末を良しとするか否かは分かれるとは思いますが、SF大好きな私としてはもはや定石なので、万々歳でした!
本当に最後まで飽きずに楽しめました!
きむきむ

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