きむきむ

心が叫びたがってるんだ。のきむきむのレビュー・感想・評価

心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)
4.4
待ってました!超平和バスターズ(団体名)作品第2弾!

始めに言っておきますと、岡田麿里作品はほとんど観てて慣れているのと、音楽がストーリーの一翼を担っている作品に弱いので、どうしても贔屓目になってると思います(笑)(これBlu-ray出たら買っちゃいそうですね!)


まずはストーリーについてですが、今作はまさに岡田麿里脚本といった形で、「これを待ってたんだよ!」という気持ちでいっぱいです。
お喋りな性格が原因で不幸になり、そんな自分が嫌で話す事が出来なくなってしまった主人公が、成り行きで出来た友達と一緒に成長していく話… あらすじはこんなところでしょうか。
始めのうちは結構ストレートな展開かなぁと思ってたのですが、全然そんな事は無かったんです(笑)このストーリーに恋愛の要素が絡んで来るんです!三角関係自体は鉄板ですが、ここさけでの三角関係の設定と描写は本当に見事で、それがストーリーの中核に堂々と居座っています。
そういう訳ですから、ここまでストレートなストーリーであっても飽きる事無く、1シーン1シーンに集中出来ました。
締め方に於いても一番自然で、納得のいくものだったので、予想はついていましたがそれでも満足のいく結果でした。

次は音楽ですが、これが本当に見事にシナリオに絡んで来ます。
まず単純に劇伴としても優秀で、ストーリーを理解させるシーンでは意識させないように、心情を理解させるシーンでは思いっきり意識出来るように音楽を付けています。なので不思議な事に「劇伴良かったなぁ」と思っても、記憶に残ってる曲は二、三曲なんですよね。その辺の誘導は完璧だったと思います。
そして劇中歌です。劇中ではミュージカルをやるのですが、ミュージカル自体のシーンは少ないものの、それを使ったストーリーと音楽の調和は総合芸術と言っても過言ではない、映像作品だからこその要素がいっぱいでした。
劇中で「ピアノソナタ第8番『悲愴』」と「Over The Rainbow」のメロディ同士をマッシュアップするんですが、その使い道が!
「うわああああああ」って感じで!(ネタバレ回避)
終盤アクシデントが起こるんですが、そのアクシデントが起こった事でなんと当初の予定よりもミュージカルとしての質が上がってる!(製作者からすればその為のイベントなのですが)
「え?普通はコレ無しだよね?あれ?でも逆にコレだとこういう解釈に… まさか? うわあああああ(ネタバレ回避)」
もう仕組まれ過ぎなんですよ(笑)劇中の世界がリアルだとしたら、劇中内のミュージカルというフィクションの中だからこそ許される最大限の演出に成功しています。
劇中からの引用ですがまさに「ミュージカルは奇跡を起こす」でした。
一本の映画で音楽がミト(クラムボン)、横山克2名というこれ以上無い体制なのも頷けます。

まとめですが、一見単純なストーリーも、音楽を通してよく観ると色々な事に気づかされる、そんな映画でした。
本当に期待通りの出来を観させてもらったので嬉しい限りです。


余談ですが…
上で2つの曲を混ぜるマッシュアップの話をしましたが、これは本当に難しくて、本来は別の曲のメロディと別の曲のオケを混ぜるので多少誤魔化せる部分がありますが、今回はメロディ同士なのでちょっとでも不協和音があるとバレます。しかも今回はメジャーキー(長調)とマイナーキー(短調)という間逆の雰囲気を持つ2曲ですから、合うのを探して狙ったのならば凄い労力(調を合わせたのなら尚更)ですし、製作中の偶然ならばまさに"奇跡"の産物だなと感じました。
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