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スポットライト 世紀のスクープのKeNのレビュー・感想・評価

3.5
Amazon Prime Videoにて。

「私が得た教訓は子供を育てる者は虐待もする。」by ガラベディアン


この作品が公開されたのが2015年だからジャニ喜多川はまだ存命中か。もしかしたらジャニ喜多川もこの作品を観たのだろうか…?

英国BBC放送のドキュメンタリー番組によって明るみに出て以来、ジャニ喜多川によるジャニーズ事務所所属の未成年者たちへの性的虐待のニュースが今年 国内外のメディアで大々的に報じ続けられ世間を賑わしていただけに、非常に生々しく またアメリカと日本の報道機関の姿勢の大きな差を痛感させられた。
かたや聖職者、かたやショー・ビジネスの“首領”のひとりという違いはあれど、貧しき信者の子供たち かたや所属タレントの子供たちという弱者の立場にある子供たちに対し絶対的に優位な立場や権力を利用して性的虐待行為を行うという彼らの行為は、間違いなく卑劣な犯罪そのものであり決して許されるべきものではない。

しかし、そうした“犯罪者”たち同様に許されないことは、そうした事実を薄々知りながらもその事実を揉み消そうとする教会組織、ジャニーズの場合には事務所の関係者たちやメディアたちの罪も計り知れないほど大きい。殊にジャニーズの場合は被害者が声を上げても週間文春などごく一部のマスコミ以外は、ジャニーズ事務所への忖度からか被害者たちの訴えを全く相手にせず“黙殺”していたというのだから本当に日本の報道は絶望的なまで酷い…。

このボストン・グローブ紙のスクープを機に、神父たちによる同様の性的虐待事件が世界各地のカトリック教会から続々と報告されたことをみると、恐らく世界各地の教会組織で組織ぐるみ地域ぐるみの大規模な隠蔽行為が行なわれたのは間違いなく、その規模の大きさからするローマ・カトリック教会の根幹を揺るがすほどの深刻な問題であることは間違いない。
この作品の中でサイプなる心理療養士が言ってたように、所詮 教会組織は元々 人間が作り上げたものであり、どんなに禁欲的な教えを聖職者たちに説こうとも、その聖職者も単なる欲深き人間そのものなのだから…。てか、ローマ・カトリックはもちろんのこと この世界に存在する宗教すべてが人間が作り上げた“まやかしの神”なのだから、当然 人間自身の持つ欲望が見え隠れするし、宗教上の理由により血で血を洗う争いの歴史が絶えないのもその為ではなかろうか…?

…と話がこの作品から完全に脱線してしまったが、この作品を観ていて素晴らしいと思ったのは、あくまでも新聞記者たちが取材する姿のみで物語を描き出し進行していく演出。『大統領の陰謀』や『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』といった作品もそうだけど、こういう一見地味で地道な取材活動をベースとする新聞記者たちの姿を描き出す演出がハリウッドはとても上手い。
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