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エル・トポのan0nym0usのレビュー・感想・評価

エル・トポ(1970年製作の映画)
4.0
幼い頃から、この世の不条理を感じ続けてきたホド爺…彼の作品には、いつもその不条理が描き出されてますよね。

求めるものが手に入っても、何かが失われる…そんな詩的な冒頭のモノローグが、この不条理劇の背骨。

マジョリティや権力は、弱者に対して不条理を与えていて…それを生み出しているものに対しての痛烈な批判に思えました…その中で弱者に与えられる最大の不条理でもある『死』を、これでもかってぐらい見せてくる。

弱者が求める光を奪い去る…太陽。だからきっとエル・トポってのはモグラって意味と共に、マイノリティたちの総称的な意味合いでもあるのかな。

そこに仏教も学んだホド爺の持つ独特な宗教観だったり、死生観だったりを重ねて描いていく事で、シュルレアリズムな表現が鮮烈に突き刺さってくる。

人の醜さのシンボリックな描き方。
作中に挿し込まれる『獣の鳴き声』を人間が放つって表現…人間の本性も、一皮剥けば『獣』と変わらないって思わされる。

インスタレーションとして作品を観ると…ホド爺の根っこにある、因果応報も含めた輪転に対する考え方が感じられる。最近の作品にも通ずるものがあります。

私たちにとっては不条理劇だとしても…
当事者たちには現実。この温度差が苦い。

ラストシーンはティック・クアン・ドックをそのまんまにして描いたような表現。

興味があれば、Wikiで調べてもらえるといいかもですね…この作品の落としどころが見つかるかもしれませんよ?(謎)

私がティック・クアン・ドックを知ったのは、Rage against the machineのアルバムのジャケットでしたが…(笑)

今作を『カルトムービー』と呼ぶ、カルトだと考えているのだとしたら…その人もきっとマジョリティ側。たとえ無意識だとしても、弱者に不条理を押し付けている要因のひとつ。

かなり痛烈…そして挑発的。
恐ろしい表現者だね、ホド爺。
まだこの頃は…博愛にまで到達してない。
まぁ、本当ならできないよね(^_^;)

でも、私はそれでも『生きろ』って、言い続けてくれる今のホド爺が好き。

色々と書き連ねましたが…個人的解釈です。

解釈はそれぞれあって、それぞれ正しい。
そういうもの。

それぞれが尊重されなければ、目に見えない不条理ってモンスターは一向に弱体化してくれないんだなー…と。

ホド爺の人生観、知れば知るほどに色々と見えてくるようになる…なんか面白いね。
敢えてオススメはしないけどね(笑)
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