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千年医師物語 ペルシアの彼方へのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

3.9
レビュー1000本祭り3本目。
なんとうれしい偶然。憧れの尊敬のイブン・スィーナーについてでした。昔昔、テレビで観たペルシャの天才医師のモノクロ映画があって、初めて知った医学の父の名前。ネットなどなかった時代なので、百科事典や歴史辞典で調べたのです。医師であり、哲学者であり、詩人であり、科学の力を信じていた偉人。

その映画は探しても見つからず、まだ探し中。

主役は母を虫垂炎で亡くし一家離散した家の長男ロブ少年。生き抜くために、理髪師の弟子になってイギリス各地を周ります。11世紀当時は理髪師は呪術的外科医術も行っていました。青年になったロブは確かな医術が東洋にあることを知り、一年かけて命懸けでイギリスからペルシャに向かいます。

イスラム圏では殺されかねないキリスト教徒なので、まだ寛容なユダヤ教徒になりすまし、イブン・スィーナーの元で世界で最も進んだ医学を学びます。

昔昔観たイブン・スィーナーの映画では、医学の進歩のために、死刑になった人の解剖を真夜中に町の外でこっそり行い、身体の構造、内臓の位置を書き留め独学していたシーンが最も印象的で記憶に残っています。

本作ではイギリスから来たロブが師匠のイブン・スィーナーに内緒でゾロアスター教の信徒の亡骸を解剖していて、イスラム教では遺体を傷つける行為は禁止されており、イブン・スィーナーが弟子のロブに身体の中を聞いているシーンがあり、イブン・スィーナーの描いた人体図は間違っているといわれます。

イブン・スィーナーは実在の人物であり、東洋の医学の父ではなく、世界の医学の父なので、フィクションではありますが、西洋人が東洋人(ペルシャ人)に科学的知見(解剖学)を与えたような描き方は?でした。

昔昔の映画だって死刑囚を解剖した話が正しいかわからないけれど、イブン・スィーナーの医学書が西洋に渡って西洋医学の基礎を作っているので、あくまでも西洋医学の基礎はイブン・スィーナーが作ったことにして欲しかったです。あとから間違いが見つかったのだろうけど。修正されていく、それが科学だから。

CGを多用していること以外は、ロブ少年が青年となり、虫垂炎で亡くなった母を治してあげたかった一心で医学を学ぶ姿勢と熱意がまっすぐ伝わってきました。ロブ役のトム・ペインの瞳がすごくきれい。
イブン・スィーナー役はベン・キングズレー、雰囲気ありました。
イギリスの理髪師はステラン・スカルスガルドさすがの演技でした。


この作品はイブン・スィーナーを発掘してくれたのですごくうれしいのですが、昔昔のモノクロ作品はいったいどこに? 岩波で昔観た人がいるそうですが、タイトルわからず。私もイブン・スィーナー(の他の映画)を探しに行ってきます。
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