バナバナ

シチズンフォー スノーデンの暴露のバナバナのレビュー・感想・評価

4.0
『スノーデン』を先に観たので、分かりやすかった。
本作はスノーデンがNSAの監視システムを暴露する事を決めて、
当時勤務していた東京から失踪し、香港でイギリスの新聞社の人達と会っている部分がほとんどである。

日本では内部告白者というと、未だに“組織の裏切り者”だとか、単なる“目立ちたがり屋”と思われがちだが、
ノンフィクションの本作を観て、スノーデン氏の真面目な人となりがよく分かり、
この人はこれから国籍が無くなり、自分に何のメリットも無いのにリークしてくれたのだ、という事がよく分かった。
それに、こうやってリークの経過を、顔出しの映像を残しておかないと、アメリカ政府に消されかねなかったと思う。

テロの防止や犯人特定の為、『米国愛国者法』が制定されたのが、ジョージ・W・ブッシュ(息子の方)が大統領をしていた2001年。
同年、アメリカ同時多発テロが起こった事が後押しとなり、
反対も無かったのであろう。
その後、インターネットの拡大により、アメリカだけでなく世界中の情報が収集できるようになった。

スノーデン氏によれば、個人の監視対象者は100万人以上いるし、
“セレクター”というアプリ?を使えば、個人の特定や、また情報収集がすぐに出来るとの事。
しかし、スノーデン氏の暴露のお陰で、この個人に対する監視は2015年に法令失効されたようである(水面下ではまだ続いていると思うが)。

これだけ膨大な情報を権力者が意のままに扱えるのも怖いが、
スノーデン氏によると、これらの情報はNSAのスノーデン氏の様な職員達も簡単に目に触れられたという。
オレオレ詐欺に電話名簿が流れているように、お金が欲しい職員に、これらの個人情報を密売される恐れもあるのではないか!?
政府に個人の思想を覗かれているのも気味が悪いが、個人情報がどこかに流れてしまう事だって怖い。

日本は未だに、個人よりも公を重視する傾向が強いが、欧米社会は日本よりも“プライバシー”を守る権利に敏感だ。
スノーデン氏はNSAのシステムで、ドローンによる攻撃の映像なども見れたそうなので、裏事情を知って、本当に怖さを感じたのだろう。
しかし、暴露する事は全てを失くす事だ。
恋人も彼を追って、今は一緒に暮らしているという事だったけれど、仕事とか子供が生まれたら、国籍も無いのにどうなるのだろう?
個人でやるには、あまりにも代償が大きいではないか!
彼が幸せである事を祈ります。
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