てつこてつ

吼えろ鉄拳のてつこてつのレビュー・感想・評価

吼えろ鉄拳(1981年製作の映画)
3.6
「モータルコンバット」で見た還暦を迎えた真田広之のキレッキレのアクションに衝撃を受け、彼が青年時代のアクション物を探してみたら、さすが、U-NEXT、品揃えが豊富・・

この「吼えろ鉄拳」は、真田広之の主演第二作目で、彼は1981年の撮影当時、弱冠21歳。千葉真一が重要な役どころで出演するのはもちろんアクション監修も務め、当時のジャパン・アクション・クラブ(JAC)の大スター志穂美悦子、後に「巨獣特捜ジャスピオン」の主役の座を手にする、初々しい黒崎輝など、JACによる、真田広之ファンのみならず、JACファンの為に作られた大作。

ストーリー展開は、良くも悪くも非常に分かりやすいヒーローアクション物。

アメリカの牧場暮らしから一変、帰国した真田広之演じる主人公が、赤いネッカチーフに革ジャン、パツパツのジーンズにカウボーイブーツ姿・・パートナーにリスザルを連れているという設定や、80年代のアイドル映画にありがちなしょーもないドタバタコメディ演出・・それでも、いきなりのビキニ女性のトップレスのどアップには驚く・・に、序盤は気持ちが折れそうになる。

顎がしっかりと逞しい肩幅ガッチリとした志穂美悦子がフリフリのドレス姿の盲目の超お嬢様設定、ちょび髭を付けたマジシャン設定で登場する千葉真一の姿にも萎えるが、そこも耐える。

その後は、真田広之のアクションが全開。バック転も軽々とこなし、キレのある身のこなし、自分の頭よりも高くスッとキレイに伸びるハイキック。追っ手から逃れるために、狭いビルとビルの間を両手両脚の力だけで登り切るや、今度は、さながら消防レスキュー隊訓練の如く、命綱一本でビルの屋上から地面にするすると降りてくる。橋の欄干から流れる川にジャンプした後には、東尋坊を舞台にしての高さ20mからのダイビング。

志穂美悦子にも、ちゃんとアクションの見せ場が用意されており、屈強な男共数人を向こうに回しての鮮やかな回し蹴り・・なんだが、さすがにここは、盲目設定にはどうしても無理がある。

真田広之、志保美悦子、千葉真一だけでなく、彼らに倒される側の悪役たちのアクションもJACならではの華麗な所作が見えるので、是非、注目してほしい。香港の水上レストランの天井破って中華テーブルに落ちてくるアクションとか「ポセイドン・アドベンチャー」ばり。

この映画は京都東映スタジオが大々的に協力している事もあって、ロケ地が神戸、京都、東尋坊、終盤にはちゃっかりキャセイ・パシフィック航空とタイアップして香港ロケまで敢行しているので、観光目線でも楽しめる。

特に、終盤、香港に渡った後の、今は無くなってしまった魔窟・九龍城やランタオ島でのロケの部分は、物凄く盛り上がる。真田のアクションも香港名物二階建てバスの屋上にしがみついたり、疾走するジープの上で、下から突き出る刃を避けながらの死闘、「西部警察」ばりにド派手に次々と爆発する浜辺を僅差の距離で疾走するなど獅子奮迅の活躍ぶりで、ジャッキー・チェンばりに身体張りまくっててシビれる。特に乗馬シーンはカッコイイね。

で、最後の最後に敵である叔父とワン・オン・ワンで拳で闘うシーンで、遂にジャケ写のような見事に引き締まった、ジムで鍛えたというより本当の武道で培った実際に使える鎧のような筋肉を身にまとった肉体美を披露。叔父にトドメを刺す方法も、なかなか粋。最後の最後には空を飛ぶヘリコプターから海面への大ジャンプと、アクションスター・真田広之の魅力が詰まった作品。主題歌も本人が歌ってたりする😀。

当時のプロレス界の大スター、アブドーラ・ザ・ブッチャーがゲスト出演しているのも楽しいし、何と言っても、秘密部屋でヒトラーの肖像画を飾る叔父役の成田三樹夫が、今の映画界にはなかなか存在しない、お手本のような凄みがある悪役顔で凄くいい。

これまで、この作品のような若き日の真田広之出演作品を見逃してきたのか我ながら不思議。「里見八犬伝」「魔界転生」あたりはテレビで見た記憶はあるのだが、真田広之のキャラクターの記憶は全く覚えていない。

連ドラ「高校教師」や、映画「リング」以降の真田広之の活躍しか知らない人には、是非とも見て頂きたい一本。

これを書いていて思い出したのが、大学に入学して上京した際、大久保に住んでいて通っていたジムが、JAC本社が近いということで、しょっちゅうスクール生たちがトレーニングに来ていたこと。伊原剛志もJAC出身でスクール生の頃は大久保に住んでいたと何かのバラエティで話していたなあ。堤真一もJAC出身で真田広之の付き人を務めていたのは、よく知られた事実。

にしても、この作品の真田広之、いくら何でも日焼けし過ぎだろ。
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