カテリーナ

皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇のカテリーナのレビュー・感想・評価

4.0
メキシコのフアレスの街は
悪臭を放つ、血生臭さと死の臭いが立ち込める
車の中からハンドルを握り景色を眺めながら
そう呟くのは
フアレスの現場犯罪捜査官の
男リチ・ソト
この街で産まれ育った
子供の頃のこの街が好きだったと振り返る
愛と優しさや思いやりがあり
人々は善良だったと、
あの頃のように戻れるだろうか
と問いかける
自分に、
そして観客に、

フアレスの警察は
麻薬カルテルに関与してる
殺人事件を殆ど捜査せず放置
市民たちからは凶弾される
息子を殺され死体を切断された
母親は「子供を殺されても誰も助けてくれない 誰がここを戦場にし
ろと大統領にいった?あの男は
私たちを実験用のネズミにした 自分が戦いの前線に立て 私たちの子供を犠牲にするな 母親たちよ なぜだまっているの 」と大声で叫び自らの怒りをテーブルに叩きつける
それを見守る市民の中に
子供を抱きながら目に涙を溜めて
いる母親がいる 憐れみの眼差しを向けながらも
次は我が子かもしれない恐れを抱いたかもしれない

この母親が一番辛かったのは
息子がすぐに殺されず
生きたまま首を切られた
つまり、なぶり殺しにされた事だ
その時の痛みを思うと辛い
そしてもっと酷いのは息子が連れ去られるのを皆が黙って見ていた事だ 報復を恐れて誰も助けてくれない 殺された後も誰も声を上げない
事件直後その動画がネットに流れる

リチ・ソトは
市民に非難されるのはさみしい
でも、自分たちの目の前の仕事をこなすしかない 逃げることはできないのだ ここで毎日を過ごして行くことしかできない
現状を変えることができなくても
この街を守るには警官でいる事しかないと暗い声で呟く

観客には絶望の先の希望の光を
この作品からは見出すことが難しいのを知っている
この街が戦場でなくなる日
彼や母親たちの願いが叶う日
その不毛な思いにやり切れなさを抱き暗澹とした幕引きを迎えるのだ
カテリーナ

カテリーナ