喜連川風連

ビューティー・インサイドの喜連川風連のレビュー・感想・評価

ビューティー・インサイド(2015年製作の映画)
-
オーダーメイドのイスとオーダーメイドのように毎回変わる顔。強烈なルッキズム社会の韓国に一石を投じる。

今田美桜と中森明菜を足したようなヒロインがめっちゃかわいい。

日本へのオマージュも多数。缶ビールは朝日。ディナーは寿司。AV女優は蒼井そら。名前はイスさん。

役者が毎夜ごとに変わる点だけでも面白いし、心の動揺に合わせてカメラが揺れ、回想シーンも白黒から徐々にカラーになる。照明を効果的に使った撮影も冴え、美しい。

ド直球の純愛もので、見ていて心地いいものの、鑑賞後冷静に振り返り気になる点も。

ビューティインサイドとタイトルで銘打ちつつ、主人公の内面の印象が薄い。

主人公が何か物事に対して、独自の見方をしたり、発言をすることは稀で、毎日、指輪をつけること以外、特に印象に残らない。特有の仕草も無く、顔が変われば本当に本人なのか分からない。

ただ、主人公の内面を強烈な性格にしてしまうと、共感を得られづらくなってしまうので映画のヒットを考えれば、難しいところ。

ビューティインサイドといいつつ、ヒロインが美人だからこそ、グイグイ見てしまう。

内面描写が薄いため、ヒロインがなぜ、主人公を好きでいてくれるのかは最後まであまり分からないまま。強いて言えば、自分の好きなブランドの家具を作ってくれるから好きなのだろうか。

自分に内面を読み取る力がないだけかもしれないが、結局、主人公は彼女の外見、ヒロインは彼の仕事ぶりが好きなだけで、ビューティインサイドというには、少し無理があるように思った。

ただ、テーマは外見か中身かというところには無いのかもしれない。むしろイケメンでモテまくる主人公が全面に描写され、外見は大事だと映画は伝えている。

自分の苦しみから相手の理解へ。真のテーマは相手の事情がどうであれで、相手のことを許容できるかどうか(無償の愛)、ここにあるのかもしれない。

本当に苦しいのは毎日その人の顔が変わることではなく、その人を感じられなくなることだと映画は言う。

なら、なおのこと主人公を感じられるような癖や発言を演出して欲しかった感はある。
喜連川風連

喜連川風連