ラウぺ

ゴースト・イン・ザ・シェルのラウぺのレビュー・感想・評価

3.0
スカーレット・ヨハンソン主演で攻殻機動隊の実写版、となればやはり見に行かないわけにはいかない作品。

私はオリジナルの漫画は読んだことがなく、アニメも最近の作品しか知らないので、コアなマニアではありませんが、ビートたけしの荒巻課長やバトー、トグサといった公安9課のメンバーや、劇中で「少佐」と呼ばれているスカーレット・ヨハンソンなどの登場人物などの設定は想像以上にアニメに忠実に作られています。
スカーレット・ヨハンソンがなぜ草薙素子ではなく、単に「少佐」と呼ばれているのか?や、他にも最初はあれ?と思うようなところも途中で明らかになることで、オリジナルの世界観に寄り添おうとする意図が感じられました。
そういう意味では、原作の世界観を重視する向きには違和感なく受け入れられるのではないかと思います。

一方で、映像は確かにゴージャスで、いかにもハリウッドらしい映画になっていますが、ゲイシャロボや街中に氾濫する3D広告などのビジュアルは「ブレードランナー」以降のステレオタイプな斜め上の東洋趣味のイメージから脱却しているとは言い難く、猥雑な印象からも遠く、あまりピンときません。

以下、ちょっと毒電波な書き込み注意

さらに、見終わってみて面白くないとは思いませんでしたが、何かが決定的に足りないという印象が拭えません。
帰り道にあれこれ考えてみるに、やはり問題はストーリーにあると断じざるを得ません。
ネタバレになるので書きませんが、ストーリーは拍子抜けするほどシンプルで(シンプルだからダメというわけではありませんが)、かといって哲学的な何か?を感じさせるわけでもなく、「エヴァ」や「シン・ゴジ」のような衒学的言葉遊びもなく、淡々と事件の核心に迫っていきます。
なので、ようやくラスボスの正体が分かったときも謎解きの知的なカタルシスに浸るということもないまま、アクションのクライマックスに突入という感じ。
ここらあたり、日本のオタク文化に多大な影響を与えた人気コンテンツの実写版として、こんな感じの内容でいいのか?と思わずにはいられないのです。
いろいろ事情もあるのでしょうけど、あと20分くらい長くしても、もっと入り組んだ、一ひねりもふた捻りもある内容にすべきだったのではないかと思います。

この作品、続きがあるのかどうかわかりませんが、とりあえず本作で設定と登場人物の説明は済んだということなら、次回作以降にもっと練られた物語を期待したいと思います。
ラウぺ

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