しゅんかみ

ファンタスティック・フォーのしゅんかみのレビュー・感想・評価

1.5
 試写会で観たため、こんなことはあまり言いたくないんだが、それでも言わずにはいられない。
 これは衝撃的なまでに酷い、と…

 しかもこの試写会、アメコミファン向け試写会というくくりにしていたせいで、むしろ本国での悪評や、撮影中のゴタゴタの情報を観客のほぼ全員が知っていると思われる状況だったため、雰囲気的にも本編が始まる前からお通夜のようだった。 

 それでも、やっぱり「観たら意外とちゃんとしてた」とか、なんなら「え?面白いじゃん」くらいになるのではないか、と思ったりもしていたんだけどね。見事にそれも玉砕。むしろ、下げていたハードルのさらに下をくぐっていった…
 昨今の大作ハリウッドアクションで、こんなものを観ることになるとは、ある意味事件じゃないか。
 むしろここまで行くと、数年後に作られるかもしれない、この『ファンタスティック・フォー』製作の裏側を描いたドキュメンタリーを楽しむためにも、逆にリアルタイムで観ておくべき。
 

 さて、内容について。まず一番強く感じたのは、これ、未完成だろ!ということ。誰が見ても明らかなくらい省かれているエピソードがあるように感じるし、クライマックスは文字通り取って付けたようなシーンの連続で、乾いた笑いしか出ない。
 まあもうネタバレもクソも無いような映画なので言ってしまうと、クライマックスは敵と対峙して四人が力を合わせる展開なんだけど、そこに至るシーンまででキャラクターの掘り下げもストーリーの積み重ねも全くないから、ただいきなり都合良く団結して戦うだけにしか見え無いんですよ。普通はそこに至るまでをドラマにするか、そこからのドラマにするはずなのに、全くそれが無いために、気持ちが上がりようが無い。こんなダメなクライマックスをマーベル映画で観ることになるとは、というほど、この一連のクライマックスは決定的に酷い。
 2005年の映画版もクライマックスは微妙だったけど、これに比べれば些細な問題に思える。むしろあの4人が恋しい!
 

 『クロニクル』のジョシュ・トランク監督が抜擢されたのも、いきなりスーパーパワーを手に入れた若者の葛藤を描くなら、至極真っ当な監督の選び方だったと思う。
 前半はその匂いをまだ感じなくも無かった。でも後半は…多分後半が監督を無視して作られたシーンなんだろうな…いや思い返すと本当に酷い。
 自分がスーパーパワーを手に入れるけど、それの使い方に戸惑うという人間ドラマになってるなら、それはそれで良いんだけど(でも、それも割とやり尽くされてるからあんまり良くはないけど)、それにすらなってない。ただ成り行きで事を解決しようとするだけで、人助けもしない。しかしなぜか帰ると世界を救った事になっているし…
 ジョシュ・トランクが悪いとすれば、自分のコンセプトを、貫き通さなかったことなのかなあ。ちゃんと周りを動かして撮りたいものを撮れていれば、本当に彼の削除したツイートの通り「ファンタスティックなバージョン」があり得たのかもしれない。
 やはり無理やりこれを世に出してしまった20世紀フォックスが、やはり一番イカンと思う。この映画ではマジで誰も得しない。

 これで得をしたのは、試写会場にゲストとして登壇した松井玲奈さんが最近まで所属していた乃木坂46が最近気になって仕方がない僕をはじめとして、松井さんの可愛さを堪能できた観客だけなのではないでしょうか…


 とにかくいろんな意味で観ていてやるせない気分にさせられる映画でした。しかし繰り返しになるけど、こんな映画はそうそうないと思うので、リアルタイムで観ておくべき映画だとも思います。…このフォローが精一杯です。