このレビューはネタバレを含みます
生い立ちゆえに、ユダヤ人でありながらユダヤ人嫌いのソ連嫌いに…
そんなチェスの天才が、冷戦時代のアメリカに利用されることで、ますます極右思想にハマり…
偏執と妄想とで…変人扱いされる…それでも、なまじ才能があるばかりに利用される…
世界王者になるんだ、ソ連を打ち負かすんだ、というプレッシャーをバネにしてたフシがあるけど、純粋にチェスを楽しむ環境だったらどうなってたのか…チェスで相手の心を折ることに喜びを見出す彼には、お互いに国を背負ってプレイしているというシチュエーションは、最も力を発揮したのかもしれないが…
天才の悲劇として見たけれど、悲劇として撮られてはいないところが、良いのか悪いのかわからなかった。
不安神経症じみた描写が良かったな…スパスキーもまた監視下に置かれているせいでフィッシャーほどではないが神経質になっているという描写が効いてた…
たった一勝で熱狂するアメリカ…というか、大衆…まるで勝利にすがるような…
脚本は良かったと思うんだけど、ロックスターのような人気っぷりを表すためか当時の明るいロックが何度もかかるせいで中途半端にエンタメちっくというか…
愛国心と、チェスというゲームやプレイヤーという個人を政治利用することへの批判と、それを煽る国家やマスコミや大衆への皮肉と…ちょっと拮抗しすぎてたかな…フィッシャーを通して、どれを見せたいの、っていうか…
結局愛国心が勝っててエンタメとして楽しめるようにロックを使って明るい雰囲気を演出した感じがして、うーん…
どっちかというと批評精神バリバリの作品が好きだから、好みではないんだけど…
客観的ではあった。そう。うん、伝記映画だから、それでいいのかも。
童貞捨てたけど、やっぱりチェスに夢中、ってな描写が、天才らしくて良かった。童貞や処女を捨てたせいで「神通力」が薄れるとかあるもんね〜…女を知ってもチェスに夢中、女に溺れない天才…それでこそ、って思った。
国に利用されたカタチだけれど、国外へ亡命したフィッシャーがどのようにして生きていたのか…そっちのほうに興味がわいたな。
こう言っちゃなんだけど、オリンピックの政治利用を題材にした映画を見てみたいと思った。いま見て良かったです。