おおさこ

人生の約束のおおさこのレビュー・感想・評価

人生の約束(2016年製作の映画)
3.0
〝80歳のドラマ界の大ベテランが初長編映画に込めた想い〟

予告篇に映る、石橋冠第一回監督作品の文字。へぇーと、なんとなく観てると何やらとても重厚な雰囲気。僕は知らなかったのですがテレビドラマの世界ではとても有名な方で『池中玄太80キロ』などを撮っているそうです。予告篇で感じたヘビィーな感じも納得です。役者も竹内豊、江口洋介、ビートたけし、小池栄子、西田敏行と超豪華です。

物語は竹内豊扮する大企業のCEO中原が、一緒に企業したもの会社から追放してしまったかつて親友航平の死を知るところから始まります。航平は隣町に奪われてしまった故郷の曳山を取り返そうとしていたものの叶わず逝ってしまいました。その想いを中原が償いの気持ちから叶えようとします。
冒頭にある曳山譲渡のシーンは曳山の持つ華やかさと、それを奪われてしまった人々の苦々しい表情が相まって、重く冷たい空気です。劇中のセリフによると、この曳山は神様や大地やそれらがもたらす恵みの象徴らしく、その曳山を祭りで引く事はそれらと〝つながる〟事を意味しているそうです。
この〝つながる〟と言うテーマだけ聞くと気恥ずかしい安っぽくも感じてしまいそうです。しかし、冒頭のシリアスな雰囲気が効いているのと、抑制された演出からも安っぽさを感じさせる事は無かったです。静かな部屋の中で〝子は育ち親は老いる〟と言った話をしてる時に時計の音がカチカチっと響く様にしていたところも細かいながらに本当に丁寧です。こういう細かい描写の積み重ねが映画に説得力を与えていました。

キャリアも実績もある大ベテランがあえて映画に挑んで伝えたかった想い。
それは世の中に溢れ過ぎて〝キズナ〟だとか〝ツナガリ〟だとか上辺だけで中身の無いものに成り下がったものを、しっかりと本来の意味あるものとして受け止め直して欲しい、と言う事じゃ無いでしょか。大ベテランが真っ向からぶつけて来たテーマに改めてしっかりと向き合いたいと思いました。