″日常的狂気の恐怖″
森田剛を拝見したのはランチの女王か学校へいこう以来かも(どっちも映画じゃないけど)。なんだこの人。映画の中の彼は最早ジャニーズの人というくくりを完全に取っ払ってた。
普通にヤバイ人になってしまい、とんでもないことやってのけた。
凄いのは演技が凄いっていうのか、存在感が映画全体を支配していたこと。
彼が画面にいなくても常に彼の影がちらついている感じ。
というかオープニング長っ!オープニング?タイトルとキャストのテロップが出てからの、それまでのコメディの雰囲気をガラッと変えてくる所が僕はあんまり観たことない作りで、ぇつ…??と声にならない声を押し殺し、まさに意表を突かれた。
ここから今までの前フリをひっくり返しに来る、きっと来る……ゴクリ(゚A゚;)と静かに押し寄せる黒い波を待ち構える重い空気。ヤバい。
いやーもう。その恐怖の元である森田くん。…森田くんって、演じる本人も森田くんだけど、
「森田くんヤバイね。」
って言葉で役者としての森田くんと、劇中の森田くんの両方の色んな意味でのヤバさを一度に表現できるので便利といえば便利(笑)
森田くん(劇中の方)ってのは人畜無害に強いわけじゃないんだけどそこがまたリアルであり、人間らしいと言いたくはないけど人間らしい。
濱田岳のピュアな青年と、ムロツヨシのムロツヨシらしいオタク変人ストーカーキャラが、どう森田くんと絡むのか。その楽しみと期待は裏切られることなく結末を迎えた。
でもこれを観ると普通に街中にも、こういう怖ろしい人がいるのでは??と本当にちょっと怖くなる。
でも本当に怖いのは森田くんではなく(めちゃ怖いけど)、森田くんを造り出したヤツら(環境も)だよなと、なんだか最後エンドロールを眺めながら色々と心にズシンと来た。
これは絶対すぐに席を立って外には出られない。立てなかった。
お母さんの入れてくれた麦茶でも飲んで落ち着こう。
邦画を映画館で観る、シネコン以外の映画館までわざわざ足を運ぶということがここ数年ずっとなかったけど、いいですね。ポップコーンの音もなく、おじさまやおばあさんからサラリーマン風、綺麗なお姉さんまで、色んな人が真剣に、各々好きな席で映画を楽しむ。
あの空間を共有できる喜びをなんだか久々に感じた気がした。