ニトー

シンクロナイズドモンスターのニトーのレビュー・感想・評価

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怪獣映画というより怪獣が出てくるカウンセリング映画というか。

そういえば、模型を作るっていうのは向こうではメジャーな工作授業なのかしら。シンプソンズでもああいう感じの模型を作っていた覚えがある。

どうして韓国なのかというのは劇中で明言されてなかったけれど、やっぱりグロリアとコリアのスペル的な語感で選んだのだろうか、彼女は。最後の韓国の酒場の人って、もしかして冒頭の女の子だったりするのだろうか。とかとか、色々と考えてしまった。もっと馴染みのある人が観ればそういうことをごちゃごちゃ考えなくてもいいのだろうけど。


アイデアは面白い(まあ子どものころのごっこ遊びをそのまま持ってきただけとも言えるんだけど、発想自体は)しハサウェイの佇まいとかオスカー役のジェイソン・サダイキスの、あのやばげな光をたたえた目とかも素晴らしい。ていうか「モンスター上司」のときと結構役柄違ったのでああいう二面的なやさぐれた役をするとは思わなかったので最初気づきませんでした。

あの役、アフレック兄弟とかベネチオ・デルトロとかがやってたら多分怪獣バトルじゃなくてリアルファイトでハサウェイを撲殺してもっとダークな方に傾いてたりしそうだな、とか妄想したり。


怪獣っていう強烈なフックはあるけど話自体はとても単純。せいぜい怪獣と二人の関係性がバーチャル世界(=ネットに当て込むことは容易)と現実世界の人間の在りようそのメタファーとして観れる、というくらい。実際、怪獣を観る時は(物理的な距離があるから)ネットを通じてしかリアルタイムで確認することはできないし。

オスカーのルサンチマンがヴァーチャルを介することでのみ発散されえず、そこに他者(の痛み)を感じ取る機能が決定的に欠如しているがためにあのような振る舞いができてしまう。
というのは、かなり現代的なテーマ性を帯びている。

物理的暴力に対して智慧によって男を打倒する(しかしそこには物理的な怪獣とロボットという対等性もある)、という点でフェミニズムというか、女性を鼓舞するような視点もあるし、グロリアの自立を促す側面があるのはまごうことなき事実でせう。

ルールの裏を突いて勝つというのも、勝利の方法としてもなぜ勝利したのかという理由も明白でわかりやすくはある。あるのだけど、確実にオスカーは死んでいますので、あんさんそれでいいのかと小一時間問い詰めたくはなる。

そう、問題はそこんですよね。楽しいんですけど、いかんせんグロリア以外のキャラクターについてモヤモヤするものが残る。

まずあの二人以外のキャラクターを持て余しているし。大体、呑気にテレビ観てる場合じゃないでしょジョエルくんは。止めに行きなさいよ、あんた全貌知ってるんだから。

ある意味でセカイ系というか、アンチセカイ系的としては、やはりオスカーが投げっぱなしジャーマンなのがいただけませぬ。

グロリアのダークサイドとしてのオスカーのラストは、というか根本的な解決になっていないという点において、私はむしろあそこは思いっきり食ってやることこそが揚棄として機能しえたのではないかと。

あと韓国に行くところの尺の都合感ががが。

そういう惜しいところがありつつも割と好きな映画ではある。
あとなぜか一緒に観ていた母がハマっていた。
ニトー

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