♪ SURRENDER 過ぎ行く時の中で
俺は何を求め 彷徨うんだろう?
広島がヤヴァイのか、時代がヤヴァイのか。
血で血を洗うような争いは激化していくばかり。『仁義なき戦い』第四弾は、副題に相応しい筆力で描かれた物語。迸る熱量に火傷しそうです。
特に見事なのはヤクザの抗争に“原爆スラム”という題材を盛り込んでいること。この攻め込み方は素晴らしいです。お涙頂戴もしくは教訓に満ちた物語ではなく、あくまでも娯楽映画ですからね。
この辺りは、さすがの昭和クオリティ。
忖度や周囲の視線など気にせず「真実は真実」と物語に組み込めたのでしょう。どれだけ配慮を積み重ねても、スラムが存在したことは変わりませんからね。
また、その熱量は本編も変わりません。
誰も彼もが尊敬できない人たちばかりなのに、ググっと惹き込まれるのは“負の側面”から目を逸らしていないから。まさに“実録映画”と呼ぶに相応しいと思います。
それにしても。
昔気質のヤクザは義理とか人情とかを大切にする…なんてイメージがあったんですが、これを観る限りだと“嘘っぱち”だなあ、なんて思いますね。主人公を含めて、誰も彼もが“自分勝手”であり、そこに“大義”なんて存在しないのです。
勿論“大義”を掲げたところで暴力は暴力。
ヤクザ同士の抗争に巻き込まれたら…堪ったもんじゃありません。
ただ、このシリーズは“薬物”を扱っていないんですよね。賭場とか、スクラップ業者の警備とか、競輪場の経営とか、色々な“しのぎ”が出てきますけど、覚醒剤の売買は描かれないのです。
この辺りが人気のポイントかもしれません。
シャブ漬けにして風俗に沈める…なんて場面が存在したら、どんなに漢気が溢れていても、虚飾だと思っちゃいますからね。やっぱりクスリはダメです。絶対。
まあ、そんなわけで。
ヤクザの真実を描いたシリーズの終着点とも言える作品。一般的には五部作と呼ばれているのでこの次に『完結編』はあるものの…綺麗にまとまったので、本作で終わりにしても良かったと思います。やっぱり人気商売は出涸らしになるまで続けないとダメなんですかね?