みーちゃん

人間の値打ちのみーちゃんのレビュー・感想・評価

人間の値打ち(2013年製作の映画)
3.9
邦題とジャケットには、全くそそられないけれど"悪なき殺人"で、吹雪の夜に失踪するエヴリーヌを演じたヴァレリア・ブルーニ・テデスキに惹かれ、主演の一人なので観た。本作でも彼女はとても良かった。

タイトルは原題を直訳した"人的資本"(経済学の概念)の方がいい。値打ちは、お金に換算できない価値も匂わせるから、それこそ観客に委ねられる部分であり、この邦題は無粋に感じる。ジャケットはお洒落とは程遠いけど、観終わってみると皮肉が効いてる。実際は、このイメージと全く違い、ミラノの映像が美しく、サスペンスとしてもセンスが良い。

それでも、私は手放しで、おもしろい!好き!とは言い切れなくて、惜しい!と思う。間違いなく良い作品なのだけど、このスコアなのが勿体ない!と感じる。

その理由を考えると、構成は、必ずしも章立て(三人の視点)にする必要は無かったように思う。章に整理されていることで分かりやすい(制作しやすい)以上の効果を、あまり感じなかったから。もしくは、第三章は"セレーナ"ではなく、"ルカ"が良いと思う。まさしく原題のヒューマン・キャピタルに直結する、上流、中流、下流の視点を網羅するし、セレーナの言動も、ルカを通して描いた方が、ドラマの深みが増すと思う。

あのエピローグも直接的過ぎて、私は要らないと感じた(色んな可能性を想像させるだけでいいのでは?)。

キャスティングは素晴らしい。父親役のファブリッツィオ・ベンティボリオのことを本気で張り倒し軽蔑したくなるのも、娘役のマティルデ・ジョリ(本作でデビュー)が小悪魔的な見かけによらず、本当は純粋で、めっちゃいい子!なのも、感情移入できる要素の一つだった。