な、なんつー、甘ったるさ!
どこまで本気なのかと心配になるくらいにシンプルかつベタな筋運びで、主演二人の役柄も類型そのもの。
楽曲はもちろん素敵だし、ゴズ夫さんも大好きだし、そもそもミュージカル映画に苦手意識もないですけども。
ちょっとイヤな予感を抱えて、物語は進み…。
中盤のとあるシーン。
壁ドン…ならぬ"宙フワ"の場面、身体も心も硬直しかけ、観終わった後の感想を早くも考え始めていたんですよ。
「自分には合わなかった」…と。
…久しぶりに劇場で泣きました。
むしろ、ボロ泣きでした…。
カタチだけの洗練には背を向けて、ディミアン・チャゼル監督が、ド直球でブチまけた、映画への、音楽への、ハリウッドへの愛。
失われたもの、取り戻せないものへの郷愁
、あるいは憧れが、スクリーンから溢れんばかり。
32歳の監督はあまりにも屈託無く、過去から放たれる美しい輝きだけで、作品を満たしてしまいたかった…のでありましょう。
ディミアン・チャゼルのバカ正直さに心を打たれ、やがて訪れたのは、胸やけするほどロマンチックなクライマックス!
自分の中に眠らせていた、"夢"や"情熱"への遠い響きが共鳴しちゃったみたいでね。魂が抜けて、ラ・ラ・ランドに旅立ってました。(入国拒否されました。)
原色が踊るおとぎの国。
夢追い人の挽歌は切なく胸に沁み、少しく苦味を残してジ・エンド。
時勢を鑑みて、今、このタイミングでこの作品が喝采を浴びるということ。
その意味合いに思いを馳せつつ、踏めないタップを踏み踏みしつつ。
「イマイチだった」という意見、頭では理解できるし、共感もできるけれども、自分の場合はどうやら急所に刺さったようで、大満足!なのでありました。
…帰り道、頭の中にリフレインするのは、
見事にアカデミー賞歌曲賞を受賞した「City Of Stars」…ではなく、予告編で聴いた「モアナと伝説の海」の主題歌なんですよ。何でや…。