Ricola

ラ・ラ・ランドのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

2017年公開時に劇場での鑑賞以来の鑑賞。
当時この映画の歌に特にどハマリした印象が強かったが、改めて見直してみると、古き良き映画作品へのオマージュで溢れた作品であり、どのシーンがどこの映画からと言うのはもちろん、作品の構造自体もそうなのだと気付かされた。


オープニングの渋滞のシーンは、『ロシュフォールの恋人たち』からと言われているそうだが、渋滞にはまって車を動かせなくなった状況を、人々が逆手に取って楽しむのは、他の作品から来ているようにも思われる。ジャック・タチの『トラフィック』はもはや渋滞がテーマでもあるが、ゴダールの『ウィークエンド』で、人々は車を前に進めることは諦めてチェスやキャッチボールに興じ始めるように、この作品でも目の前の渋滞から目を逸らし、自分たちの夢を語って踊り始めるのだ。

公園で踊り出す二人やsomeone in the crowd でパーティーを楽しむ人々が停止してミアが通れるように、手や腕、顔などが少しずつ外れていく。
この演出は『バンドワゴン』のワンシーンを彷彿とさせる。
また、ミアとセバスチャンの夢の世界を表現したシーンは『巴里のアメリカ人』から来ているだろう。

次に、ストーリー構造自体に目を向けてみる。カフェで働くミア。現在の自分の状況に不満を抱いている。好きなものに囲まれたピアノの部屋でひたすら練習するセバスチャン。彼もミア同様にくすぶっているように感じている。出会う前の二人のこの構図も『ロシュフォールの恋人たち』なのだ。特にミアは誰かとの出会いを待ち望んでおり、それによって自分の未来も切り開かれると信じているのだ。それは、新しい世界であるパリに憧れつつ新しい人との出会いを望むデルフィーヌの姿と少し重ねて見ることができる。

古き良き時代への憧れを、ミアもセバスチャンも抱いているが、それを夢として片付けてしまい、部屋中にあったイングリット・バーグマンなどの映画スターのポスターを捨て去ってしまう点に悲しく感じたかと思えば、セバスチャンは紆余曲折あったものの自分の好きなスタイルを貫いてそれを仕事にできたという結末は、希望溢れるものだったのではないか。2人の恋愛がうまくいかなかったとしても、いい思い出として過去を抱いて前に進む姿は、『シェルブールの雨傘』の恋人たちの姿であった。
Ricola

Ricola