ティムロビンスに激似

ラ・ラ・ランドのティムロビンスに激似のレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.4
セバスチャン(ライアン・ゴズリング)は古き良きJAZZを愛し、JAZZバーを開店することを夢見ている。
JAZZは今、死につつある。だから俺はJAZZを守るのだ!
セバスチャンは自己陶酔しつつ、ヒロインのミア(エマ・ストーン)に自己流のJAZZ論を熱く語る。
バックには黒人JAZZマンたちが、まるで博物館の展示物のようにステージに立ち、JAZZを奏でる。
一方で、セバスチャンは黒人の友人キース(ジョン・レジェンド)と組んだバンドで、斬新なアレンジを加えたJAZZを演奏する。

この演奏シーンは、セバスチャンとミア目線で否定的に描かれている。
しかし、デイミアン・チャゼル監督自身が必ずしもこうした音楽を否定しているわけではない。
同じことは本作でのサルサや、80'sポップスに対する2人の態度にも言えるが、これらは芸術家である主人公2人が持つ「こだわり」というものではないか。

本作は、50’s〜60’sハリウッド式ミュージカルのフォーマットを採りつつ、ハリウッドのある「LA(ロスアンジェルス)」への賛歌、そしてショウビジネスの世界を支える芸術家たちの、ある種の哀しい性(さが)を描いた作品だと私は思う。
もし、作中の2人が全ての音楽を平等に扱い、「こだわり」なく生きていく人物として描かれていたらどうだろう。
一気に本作に込められた情熱が白けてしまうのでないか。
自分の「こだわり」の実現のためには、それを妨げる何かを犠牲にせざるを得ない。
それが嫌ならば、自己実現のための「こだわり」を捨て、今の自分の枠内での幸せに安寧するしかないのだ。

「過ぎた事、選ばんかった道、みな、覚めた夢とかわりやせんな。」
傑作「この世界の片隅に」に出てきた台詞が、怒涛のラストシークエンスを観ている私の胸中を駆け巡った。
しかし、自分が最後にとった選択は間違いではなかった。
そう思って最後に二人は笑顔を交わしたのだ。