ティムロビンスに激似

ブレードランナー 2049のティムロビンスに激似のネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「失せろ、人間もどき野郎」
落書きされたドアを開き、Kは自宅のアパートに戻る。
明かりをつけると、朗らかな音楽が鳴り、奥から女性の声が聞こえる。
「今日はどんな日だった?」
Kは食事の準備をしながら微笑み、明るく答える。
「いつもと同じさ」
Kは窓に向かって独りテーブルに座り、先ほど作ったレトルトのパスタを置く。
「お口に合うかしら」
おもむろにレトロなダイナーのウェイトレス風の服装をした若い女性が現れ、Kに話しかける。
彼女の名前はジョイ。ウォレス社製のホログラムソフトウェアだ。

「今日はプレゼントがあるんだ」
Kは包みを開けると、ジョイ用のモバイルデバイスを取り出す。
「これでどこでも出かけられるよ」
Kがコンソールを操作すると、ジョイは天井に設置してあるハードからモバイルデバイスに転送される。
「嬉しい」
感激のあまりKに抱きつくジョイ。
しかし、彼女はホログラム。Kは触れたくても触れることができない。

食事を終えると、アパートの屋上に出るKとジョイ。
しとしと雨が降りしきる中、ジョイは恐る恐る外に出る。
雨がジョイのホログラムのボディを揺らす。
ジョイは目を瞑り、雨を感じようと両手を広げて雨空を仰ぐ。
やがて、Kの元にジョイが寄り添い、二人は口づけをかわそうと・・・。

この一連のシーンを、特に2度目以降の鑑賞時には涙無くして観ることができなかった。
表情豊かなジョイに対し、表情に乏しく終始哀しげなK。
二人ともつくりもの。しかし、そこにあるのは確かな愛。

「真実」に行き着き、苦悩するKにジョイは声をかける。
「貴方は特別なのよ。だから名前があるべきなの。貴方は”ジョー”よ・・・」
彼女が何故Kをジョーと名付けるのか、観客は、その理由を後半で知ることになり、胸を締め付けられるような想いに駆られるだろう。

ジョイは一見、ひたすらKに従順に見える。
しかし、Kが”女性”と絡む場面で、ジョイの起動音(”ピーターと狼”のイントロ)が流れる。
「アタシのジョーに馴れ馴れしくしないでよ!」
というジョイからのヤキモチのサインだ。
なんと可愛いらしいことか・・・。

肉体を持ち、移植された記憶とともに生きるレプリカントであるKに対し、肉体を持たないジョイはもっと即物的なプログラムだ。
それゆえに、レプリカントの娼婦からも「貴方の中身は空っぽよ」と揶揄される。
では、ジョイのKに対する愛情はプログラムに過ぎないのか。
しかし、それは作中で明確に否定されていることを断言したい。

ラスベガスでデッカードの居場所を突き止めたKとジョイは、ラヴが率いるウォレス社一味の襲撃を受ける。
ラヴは圧倒的な攻撃力でKを追い詰め、トドメを刺そうとする。
そこにジョイが現れ、「止めて」とラヴに訴える。
ラヴは冷酷にもKにトドメを刺さずに・・・。

感情のないプログラムに果たして「自己犠牲」の精神はあるのだろうか。
このジョイの行動は、身を挺して恋人を護らんとする「人間」の行為そのものだ。
Kは大義のために人間らしく死んでいく。
ジョイもまた、愛する人のために人間よりも人間らしく死んだのだ。