ティムロビンスに激似

わたしを離さないでのティムロビンスに激似のレビュー・感想・評価

わたしを離さないで(2010年製作の映画)
4.0
ご存知、ノーベル文学賞を受賞した英国の作家カズオ・イシグロ原作。
物語の舞台となる寄宿学校ヘールシャムで、主人公キャシーをはじめとする生徒達は、個性を殺し、身の程を弁え、全体に同化するような教育を施される。
しかし、当のキャシー達は、それを当たり前に享受し、あっけらかんとしている。
彼らなりに寄宿舎生活を楽しみ、悩み、そして恋をする。

幼馴染みのキャシーやトミー、ルース達は共に成長しながらも、少しずつ自分のアイデンティティを疑い始める。
いずれ来る「提供」の意味を彼らは薄々と知っている。それを名誉あることとして誇りにすら思っている。
しかし、自分が見て感じ生きていることには何か他の意味があるのではないか。自分たちはどこから来て、どこへ行くのか。
こうした自分たちの中で沸き起こる疑問を解決したい欲求が抑えきれなくなり、彼らは「親」探しの旅に出ることになる。

そんな彼らの姿に、リドリー・スコット監督作の「ブレードランナー」におけるレプリカントを重ねずにいられない。
レプリカント達もまた、自分たちの存在意義を知るために、「親」との面会を果たす。
そして、あまりにも身もふたもない、残酷な現実を知ることになる。
本作のキャシーやトミー達が行き着く先もまた同様だ。

しかしなんと、キャシー達はレプリカントの様に「親殺し」をするどころか、どこか達観した態度で自分たちの運命を受け入れる。
本作は一貫して当事者であるキャシー達の目線で世界を描写する。
それゆえに、最後に彼らが残酷な運命を受け入れ、思い出とともに生きて行くことを決意する姿に、いたたまれない気持ちになった。
しかし、キャシー達は不幸だったのか。否、彼らの最期の姿は幸福そのものだ。
私たちが当たり前に享受しているように、彼らは自分達が享受すべき「世界」を、彼らなりの生き方で幸せに生きていくのだ。