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LION ライオン 25年目のただいまのruublueのレビュー・感想・評価

3.5
ライオン25年目のただいま
フォロワーさんのお薦めで鑑賞

(実話) 日本人が知り得ないインドでの迷子の扱われ方とその後の人生を描く。インドで親とはぐれた子供の置かれる環境が他に比類ないほど過酷なものである事が描かれる。前半部分は見続けるのが辛くなるほど。

孤児を預かる施設で里親に選ばれ早々に施設を後にする子。主人公のサルーは良い里親に恵まれる。運の良い子が居る一方で、そうでない子も。運命を分けるのは神のみぞ知る。この場面は淡々と過ぎていく分、乾いた残酷さを感じる部分となっています。


この映画が描くおおよそ25年前のインドの環境や時代性からは戸籍台帳、住民票が管理されているようには見えない。施設は親元を探す事に余り熱心では無い、あるいは探す事に困難な状況を抱えているように見受けられました。


インドの一昔前や現状を知るのは異国の者からは難しいですが、その国が抱える社会構造の難しさは弱者を飲み込む様が描かれる。年間何万人と発生する迷子は売買の対象となるか、生死の狭間を彷徨う事となる子供らの実態を映画を通じて知る事となった。



(映画に戻って)
その後、他国で何不自由ない暮らしを与えてくれる良い里親にサルーは育てられ真っ直ぐな人間として成長する。

成人し本当の両親や可愛がってくれた兄を探したい気持ちの高まりを抑えきれなくなる。しかしサルーがこれまで命を繋げられ立派に成長出来たのは彼を育んでくれた里親のお陰であり、行動を起こす事は育ててくれた両親を裏切る事になるのではと彼は恐れるのだった。


(映画の鍵を握る、ある文明の利器)
私達が日頃慣れ親しんでいるツール。毎日使っている機能が誰かの25年間の空白を埋める可能性を秘めている事がこの映画の一大テーマとなっている。

国境も文化の差も超えられるツールは今後、誰も思いつかない進化を遂げて行くと思われる。ほんの15年程前であれば主人公サルーの一歩は前に出す事は出来なかった事だろう。この映画はAIに人間社会が凌駕されるのでは無く、AIが個人だけの力では及ばない未来を見せてくれる可能性を提示しているように思えた。ただどんなに進化しても人間が行動を起こさないと文明の利器の方から動いてくれる事はない。


感動したかったけれど前半部分の過酷さが未消化のまま残ってしまい、後半は乗っていけず個人的にすっぽ抜けましたが、実話を元にした映画である事が観終わった後に心に響きます。

インドの行方不明者の事情など、辛い場面がありますが、今世界で起きている事を知っておく為のドキュメント映画だと思います。意義ある視聴となり、お薦め下さったフォロワーさんに感謝致します。
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