茶一郎

イット・フォローズの茶一郎のレビュー・感想・評価

イット・フォローズ(2014年製作の映画)
4.6
『歩け歩け運動』

 これは『人間の死亡率は100%である』についての映画だと思いました。
ホラーを下敷きにしながら、死に対する生、愛の尊さ、果ては人間賛歌にもつながる美しさが描かれていると感じます。

 姿が不特定な "それ"が歩いて追いかけてくる、という設定は人間の本能的な恐怖に直結するように思え、ホラー要素としても誰がいつ襲ってくるか分からない緊張感に上手く寄与している。それをワイドな画面でじっくり見せられる怖さ。
画面上でゆっくり歩いている人が見えると、いつ襲ってくるのかとビクビクしてしまいます。またシンセによる音響で気持ちは最高に煽られる。
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 『死』を頭と体でしっかりと認識し始める時期は確実にあると思います。
主人公の19という年は、子供とも大人とも見られる中途半端な時期。まさに冒頭の主人公のようにプールでプカプカ浮かんでいる地に足が付いていない感覚です。その中で、性への意識とセックスへの期待は誰しもあるはず。

『セックスとは二人以外の世界を忘れることである』
とは町山智浩 著 「トラウマ恋愛映画入門」の「ラストタンゴインパリ」についての項目名ですが、今作における『セックス』は死に対する『生』
散々に追いかけ回された主人公が行き着くラスト。そこで描かれるのはそれでも生きて行く主人公たちの美しい『生』の肯定に見えました。

 美しくて怖い映画です。
"それ”の正体は物語序盤からドフトエフスキーの「白痴」の引用によって明かされていくのですが。アメリカではトピックにもなっている"それ”の正体。監督自身が『性病』であることを否定せざるを得なくなったり、正体についてはインタビューできっかり答えてしまったりと何とも味気ないです。映画の余白部分の重要性を再確認。

イットを信じるか、信じないか