シズヲ

ジーザス・クライスト・スーパースターのシズヲのレビュー・感想・評価

3.7
イエス・キリストが受難に至るまでの七日間を描くロック・ミュージカル!ブロードウェイで公演された舞台劇が原作だけど、このアイデア自体がブッ飛んでいて度肝を抜かれる。全編に渡ってアップテンポなロック・ファンク調のサウンドが歌われ、そこにジーザスすら参加して高らかなシャウトを披露するという衝撃ぶり。イスラエルという原典に忠実なロケーションで撮影されているのに対し、時代もへったくれもない衣装や小道具の数々が登場するのでギャップに面食らうばかり。堂々とバスに乗って現れる役者陣、半ばヒッピーのようなスタイルの信者達、サングラスを掛けた成金風の皇帝など要所要所の描写がカオス。黒人歌手が演じるユダは歌声や風貌も相俟って殆どファンク系ミュージシャンめいてる。

ジーザスが“肥大化する崇拝を向けられて孤独な苦悩を抱える一人の人間”として描かれている他、裏切り者のユダを“ジーザスへの想いが葛藤と危惧へと結び付き、思い悩んだ果てに裏切りへと走ってしまった弟子”として描写するなど大胆な解釈が飛び出す。作中でもマグダラのマリアを交えた上でこの二人の姿が何処か対比的に映し出されるだけに、さながら愛憎劇のような匂いを醸し出している。終盤、プレスリーか何かのような衣装に身を包んだユダのライブとイエス・キリストの受難が同時進行する演出は強烈なインパクト。

敬虔なキリスト教徒からは元ネタのミュージカル共々非難されたらしいけど、この挑戦的な内容と混沌ぶりを見たら実際納得してしまうからフフってなる。
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