めしいらず

優しい嘘のめしいらずのレビュー・感想・評価

優しい嘘(2014年製作の映画)
3.8
いじめ苦で突然逝ってしまう主人公の少女。女手一つで姉妹を育ててきた母は、誰に対しても無愛想で家族にすら冷淡な姉は、相談も遺書もなかったことで本人の真情を汲み取りかねて苦しむ。姉は妹のクラスメイトを尋ねて回り、知らなかった学校での様子の証言を得ていく。すぐに発覚する自称”親友”からのいじめ。己の保身しながら相手に心理的圧迫を加えるその狡猾で卑劣なやり口。このいじめっ子の言葉は表面と真意がまるで逆なのだ。道義的に責め難くいくらでも言い逃れできてしまう(いけしゃあしゃあと開き直る彼女と母親は瓜二つだ)。だからこそ余計に底意地が悪い。このいじめっ子は相手の気持ちを察知し先回りする真性の性悪。クラスメイトたちは結束していじめに知らぬ顔を決め込む。だがいじめっ子だっていじめを介することでしかクラスメイトとの繋がりを感じられぬほど孤独だった。また主人公が唯一心を開いた友との訣別には、至らぬ彼女らの親の事情が絡んでいた。いじめっ子はもちろん悪い。見捨てた友も悪い。でも積極的でなくとも無視によっていじめに加担したクラスメイトだって、事情を知っていて改善できなかった学校だって、助けてのサインに気づけなかった家族だって、その責めを負わずには済まないはずだ。これは個人間だけの問題ではなく社会を巻き込んだ問題でもある。そしていじめっ子が今度はその標的となる現実。誰かを悪者にすることで己の居場所を守ろうとする人間の嫌らしい本質。でも家族の一員が何らかの不正義を問われるとき、その家族だけは庇いだてしてしまうのも必然。人が自殺したとき、残された周りの者たちは、被害者側、加害者側を問わず、どちらもが傷まずには済まないのだ。主人公がひっそり残していた毛糸玉の中の遺書。そこに書かれていた赦し。最後まで恨み言なく逝った健気さが”優しい嘘”なのだろうか。居眠りの姉が見る夢があまりに痛切で、彼女と母が並んで歩む帰路があまりに優しくて胸を突く。起きてしまったことをなかったことにできたらどんなにいいだろう。でもそれを考えてみても詮無い。悲しみは決して消えないけれど、それを受け入れることで痛みだけは少しずつ癒えていく。慎ましく美しいラストシーン。

”他人になら話せることもある。隠し事をする必要がないから”
”謝罪を受ける気のない人に謝るのは、逃げ道を作って人の心を弄ぶようなもの。謝ったけど伝わらなかったって逃げられる”
”それくらいで死ぬ?”
”関わりたくない人でも永遠には避けられない。憎いなら憎みながら生きればいい”
めしいらず

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