あーさん

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオスのあーさんのレビュー・感想・評価

4.4
ライ・クーダーの声掛けで集まったキューバの老ミュージシャン達(60〜90歳)のバンド、B.V.S.C.(ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ)。
熱狂的な人気を博し、社会現象に。。
N.Y.はカーネギーホールでのライブが大成功を収め、、あれから18年の時が流れた。
彼らのその後を追ったドキュメンタリー。


前半は前作と重なる部分もあり、少しもたつく感じもあったのだが(今回ヴィム・ヴェンダースは監督ではなく総指揮に名前を連ねている)、今作から入った人にもバンドの成り立ちや主なメンバーの人となりがわかるような親切な内容になっている。
後半は今は亡きミュージシャン達の最期の演奏やギリギリまで走り続けた彼らの熱い思いが描かれていて、再び胸がいっぱいになる。。

とにかく私はヴォーカリストのイブライムの笑顔が好き!^_^
辛い子ども時代を思わせない、彼の笑った顔が心の底から好きなんだ。。
そして、声!
唯一無二のこの声は、キューバの宝物だ。
彼はもうこの世にはいない。
いないけど、彼の音楽は永遠に語り継がれていくだろう。素晴らしい音楽に国境なんてないはずだ。
亡くなる2年前、2003年にグラミー賞を受賞したが、アメリカに入国を拒否され、授賞式に出席できなかった。"私は少なくともテロリストではない"と言った彼の悔しい顔が忘れられない…。
亡くなる4日前が最後のライブだった。
病いを患い周りに心配されても最後の最後まで、好きな音楽をやり続けたイブライム。一時は音楽を諦めかけていた彼が、晩年ここまでのことを成し遂げると誰が想像しただろう。。

そしてその後、B.V.S.C.はなんと功績が認められ、オバマ大統領時代にホワイトハウスに呼ばれて演奏する機会を得ることに。天国でイブライムもさぞ驚いていたことだろう!
2015年にはオバマ大統領がキューバを訪問し、"雪解け"などと言われたこともあったのだが、、また歴史は逆戻りなのだろうか。
50年来の友人である若かりし頃のオマーラとイブライムの楽しげに歌う映像が観れたのは、嬉しかった!
なかなか芽が出ずバックコーラスに甘んじていたというのも、彼の控えめな人柄故なんだろうな、と理解できた。

この間観た、フジコ・ヘミングもそうだったけれど、諦めずにやり続けていれば、
"誰にでも人生の花はいつか必ず咲き誇る"
そういうことなんだ、と思う。

車椅子に乗るようになっても尚、ピアノを弾く為に舞台に上がっていた大好きなピアニスト、ルベーン。

ピッチがズレていても自分は間違ってない!相手がおかしい!と主張するコンパイ。。こんな姿ももう見ることはできない。

その一つ一つが愛おしく、音楽を愛し、音楽に集い、虐げられた歴史を思いながら歌い、演奏する。
大袈裟に言えば、心を解放する唯一の手段がキューバ人にとっては音楽だった。

彼らの心の叫びが聴こえる。
古くは奴隷時代からの哀しみを乗り越えて、音楽に昇華していける、素晴らしさ。人間の力強さ。
チャラチャラしたそこらへんの音楽とは全く一線を画した本物の音楽。

B.V.S.C.が終わってしまうのは寂しいけど、彼らからの贈り物を私はずっと大切にしていこうと思った。


音楽好きの方には、前作と併せて是非とも観ていただきたい!




アディオス❗️B.V.S.C.!!




(ライ・クーダーと共にこの個性の強いメンバー達のバンドをまとめ上げた、バンドマスターのファン・デ・マルコス・ゴンザレスの働きが素晴らしかった。。)
あーさん

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