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さらば冬のかもめのzhenli13のレビュー・感想・評価

さらば冬のかもめ(1973年製作の映画)
3.8
『ホールド・オーバーズ』を観て久しぶりに観返した。両作続けて観ると呼応するような味わいがあった。3人の移動、未成年の飲酒を断られる、アイススケートなど、『ホールド・オーバーズ』がオマージュしたと思われるシチュエーションがある。『さらば冬のかもめ』の年齢や人種の違う男3人ブロマンス(まではいかない)が『ホールド・オーバーズ』ではさらに年齢差が大きくなり女性が加わることで新たな物語が生まれている。
何より〈若い世代に禍根を残さないために大人が責任を負いつつも体制への抵抗(しかし極めて小さな抵抗)を忘れない〉という顛末こそが、ハル・アシュビーから『ホールド・オーバーズ』が受け継いだものだろう。
ロバート・アルドリッチの『クワイア・ボーイズ』なんかもちょっと思い出しながら観ていたが『クワイア・ボーイズ』(というよりアルドリッチ)はあくまで人間としての個々人の尊厳へ帰着する。

こうやってみるとアメリカン・ニューシネマと呼ばれる映画に表されたものは、カウンターカルチャーの最後の足掻きに満ちていて、カウンターが文化では無くなり個の責任(または無責任)へ落とし込まれる諦念の時代の始まりを表すものだったんだろうなというのがありありと感じられる。あとはやっぱり、精神障害へのフォーカスは異常性を際立たせていた60年代までの表現を経て、半ば同病相憐れむ共感の意思表示へと変化していったことがよくわかる。
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