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この世界の片隅にのKKMXのネタバレレビュー・内容・結末

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

心の最深部が揺り動かされる作品で、鑑賞中よりも鑑賞後にジワジワと感動の波がやってきました。

この作品は、かけがえのない日常やそれを侵食して破壊していく戦争の無慈悲さ、傷つきながらも愛すべき人々とともに再び日常に戻っていく人間の持つ根源的な強さが描かれているように感じました。
その描写が優しく淡い絵柄で、これ以上ないほど丁寧になされるため、心が弱火でコトコト煮られるように、物語が深く深く染み込んでくるのです。
強火でサッと炒められるハデなやつもスカッとしますが、このじっくり来る感じは格別です。

テンポ良くも淡々とした作風も誠実。すずさんの情動表現を彼女が得意とした絵を用いて行うなどの演出も素晴らしかったです。

そして、すずさんのキャラが最高に可愛らしい。ボーっとするにもほどがあるだろッッ!と思わず突っ込みたくなる。大人の迷子とか、砂糖のくだりとか。のんの声もハマり役でした。

戦災孤児がすずを母と勘違いし、そのまますずの家で育っていくことを示唆するエンディングは、大きな人間愛を感じました。新しい家族となった孤児と過ごす日常が描かれるエンドロールも秀逸。

評判通りの傑作でした。
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