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イコライザー2のsanbonのレビュー・感想・評価

イコライザー2(2018年製作の映画)
3.6
嵐と静寂の両立が可能であるとは、まさかの映像体験であった。

前作ラストで「救われない人々を救う使命」に駆られたロバートは、その後も悪の手により命の危機に晒された人を見付け出しては、卓越した諜報活動によって身元を割り出し、救出と制裁を執行する「慈善活動」に勤しんでいた。

そんな彼が次に転職したのは「タクシードライバー」。

運転手として、様々な乗客の様々な人間模様と接していると「異質」はおのずと向こうから近づいてくる。

そのような方法で日々違和感を察知しては、時にはヤリサーにレイプされた少女を救っては、加害者達には容赦のない制裁を加えていくのだった。

今作では、度々ロバートの「視線」を通して、相手から発せられる言葉や仕草、感情の機微を読み取り、その人物の境遇や次に起こす行動を先読みする「メンタリズム」の能力を強調して描く場面が多々あり、これにより彼の強さの根源が垣間見えるアイデアが特徴的で、かつ面白い仕組みとなっている。

そんな彼の唯一の趣味である「世界の名作文学100冊」を読破する目標も、今回でちょうど100冊目を迎えようとしていた。

前作では91冊目だった事を考えると、今作の時系列は前作から見ても、それ程遠い未来の話ではないようだ。

それにしても驚かされるのは、前作でミッションをこなすうえで信条としていたものが、今回全く劇中で活かされない点だ。

19秒ルールの撤廃。

銃やナイフなど凶器類はバンバン使用する。

救済のチャンスを与える事もほぼ無し。

何かある度に計測していた腕時計のストップウォッチも、今回はほとんど実施されなかった。

ロバートは、均等に折り畳んだハンカチにティーバッグを挟んで持ち歩くなど非常に几帳面な性格ゆえ、自分で取り決めたルールにも人一倍厳しいのかと思っていたが、どうやらそのルールは観ているこちら側が勝手なイメージで貼っていたただの「レッテル」だったらしい。

ただ、舞台設定がガラリと変わりそれらの要素が無くなっても、不思議とこの物語が「イコライザー」だと認識出来るのは、ロバートの人物描写や信念が前作である程度確立出来ていた証拠ではないだろうか。

また、誘拐された少女救出やヤリサー共へのお仕置きなど、例に漏れず本筋とは無関係に突如挿入される別軸の制裁には相変わらず混乱をきたすが、今作は前作で引っかかっていた、意味があるのかないのか結局わからないような引用や行動などは限りなく無くなっており、前作と比べても格段にシンプルで観やすくなっていたのは好印象だった。

そして、今回敵になるのはCIA時代ロバートと全く同じ訓練を受けた特殊工作員である、かつて仲間だった「デイヴ」という男。

彼は、本職とはまた別に殺しを請け負う裏稼業を展開しており、それが身内にバレそうになった事から、口封じの為ロバートにとっての「ただ一人の親友」を手にかけてしまう。

物語が本格的に動き出すのが、本編終了の約30分前後となかなか焦らされるが、ここからの約30分間は正に怒涛の展開であった。

優れた「空間察知能力」と「違和感に敏感」なデイヴには、隠し部屋に隠れた人間ですら炙り出すスキルがあり、今回の敵との攻防にはスペシャリスト同士ならではの無駄のない緊迫の展開が楽しめた。

そして、最終決戦の地に選ばれたのは、ハリケーンが上陸し無人と化した閉鎖中の町。

そこは、かつてロバートが亡き妻と生前暮らした場所でもあった。

冒頭にも書いたが、この最終決戦の描写が非常に秀逸で、まずハリケーンが上陸し突風と横殴りの雨が吹き荒ぶ中繰り広げられる戦闘自体が、意外にも目新しさを感じるシチュエーションとなっており、しかも猛々しく打ち付ける雨風とは裏腹に行われる戦闘はいつも通りの一撃必殺で、淡々と命のやり取りが行われ、驚く事にこのシリーズ特有の「静けさ」はそんな中にあっても健在なのである。

同じ画面に「静と動」が入り混じり展開される様はなかなかの衝撃度があり、映画の見せ方としても新たな発見であった。

今作は前作に比べても、ロバートの行動原理が明確化されている分見ている側にも分かりやすく、敵のレベルも同門対決とする事で更なる緊迫感の中鑑賞する事が出来た。

個人的にはシリーズものとして、正当な進化を遂げていたと感じられた為、概ね満足度の高い作品であった。
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