未島夏

ザ・サークルの未島夏のレビュー・感想・評価

ザ・サークル(2017年製作の映画)
3.5
プライバシーの過剰な排除による人脈のフラット化が生み出す、壮大な「ありがた迷惑」のお話。

爽やかな笑顔で挨拶するかの様に他者のプライバシーへ土足で介入する姿は恐怖そのもの。
【他者のプライバシーへの介入=シェア=思いやり】という構図を一片の曇り無く押し売る。

アクティブへの渇望と故郷での暮らしによる安堵の狭間で、自身の能力を活用する事への欲求と、それが不可能な故郷へのフラストレーションによるジレンマが上手くサークル社へ導く動機として作用している。
テクノロジーへの否定と肯定が入り乱れるその様相が、この映画で最も実感出来る「今」かもしれない。

人物の思考へのフォーカスをサークル社内部に絞る事で大衆の思考を統一化し、ラストシーンまで批判的ノイズを表面化させない事でスムーズにシナリオが進行する。
ただしその分だけ心理の変動に対するリアリティラインは下がる為、集団心理でまかり通すには限界も見える。

「灯台下暗し」のラストは滑稽で好感触だが、やや簡単すぎるか。
未島夏

未島夏