yumeayu

シン・エヴァンゲリオン劇場版のyumeayuのレビュー・感想・評価

5.0
『終劇』

本当に終わってしまった…。
公開初日にわざわざ休みを取って、始発で映画を見に行く体験なんて今後ないんだろうなぁ。
だけど何故だろう…不思議と寂しさや喪失感は感じない。むしろ晴れ晴れした気持ち。

何度も延期された結果、奇しくも東日本大震災から10年目、卒業シーズンであるこの3月に公開となったのはある意味で正解だったのではないでしょうか。
シンクロ率は"無限大"!
それくらい満足できる完結編でした。

まさにオールキャストによる大団円。
大方の予想どおり、この新劇場版は最後まで父と子の物語でした。そして子は見事に親を乗り越えて、大人へと成長を遂げました。
思えばTV版で「おめでとう」とみんなに見送られていたあの少年が、25年の時を経て、一人一人の物語を終わらせる役目を果たすとは思ってもみなかった。これ以上の成長はないでしょう。

今作の終わり方は、TV版、旧劇場版、新劇場版それらすべての真のエンディングとしても受け取れるし、貞本義行の漫画版に展開や設定が似ていたのも偶然ではない気がする。
25年間の集大成。まさに"さらば、全てのエヴァンゲリオン"。キャッチコピーに偽りなしでした。

ただ、今作でも明かされていない謎や、初耳となる固有名詞やワードが連発されました。
しかし、それでもくどいくらい丁寧な説明台詞や、今までにないくらいわかりやすいメタ要素など、それらが気にならない綺麗な幕引きには正直驚きました。

"家族を大切にすること"
"他者を受け入れること"
最後の作品に込められたメッセージは、エヴァにしてはすごく青臭いものだけれど、こんな時代だからこそ胸に響くものがありました。
今作を見た後、「Beautiful World」を聴くと、歌詞の印象がガラッと変わる。あの曲は彼のための歌だったのかもしれない…。

そして、何より痛感したのは庵野監督からファンに向けてのメッセージ。
思えば25年前、自分もシンジやアスカ、レイと同い年のチルドレンでした。それからミサトさんや加持さんの年齢を越え、いまや子を持つ親になってしまいました…。

四半世紀ですからね。さすがにシンジ達も、僕らファンも卒業しなければならないですよね。
そんな気持ちを察してか、今作は旧劇場版のように冷めた感じで突き放すこともなく、そっと背中を押してくれるような優しさを感じました。
そういった意味で、今作で僕らを"エヴァの呪縛"から解放し、綺麗に区切りをつけてくれたことは真摯に受け止めたいと思います。

結局のところ、エヴァンゲリオンという作品は庵野監督の私小説のようでもあり、ライフワークのようでもありました。
そこに区切りをつけた意味は、きっと今後の活動で分かってくるのでしょう。
ひとまず庵野監督をはじめ、キャスト、スタッフに感謝と労いの言葉を捧げましょう。


おやすみ
おはよう
ありがとう
さようなら 


だけど「"さようなら"はまた会うためのおまじない」なんですよね??
yumeayu

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