ベビーパウダー山崎

Few of Us(原題)のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

Few of Us(原題)(1996年製作の映画)
4.0
上空から辺境の地を見つめる世捨て人のようなエカテリーナ・ゴルベワの眼が死んでいる。どこの誰かも、民族かどうかも定かではない者たちの厳つい面。業を背負い極まった面のゴルベワも負けてはいない。寂しいとか哀しいとかを超えてしまった佇まい。社会から外れた人たちがひっそりとその日暮らしをしているドヤ街で寝泊まりしていたとき俺も見たことがある顔、顔。いるんだよ、そういう集団にもゴルベワのような女性が確かに。そして、その女性を巡って男たちの対立が起こるのも知っている。話し言葉の代わりに表情、目の動き。関係は一方通行。
澄み切った風景をただ映してうっとりするだけならくだらないと一蹴するが、裸の愛撫も不意の暴力も正面から恐れず描いているのが素晴らしい。銃で撃ち殺す、その静けさ。生存本能としての食う、寝る、ヤル。時代に流されない表現で勝負するなら暴力もセックスも避けては通れない。地の果てで行き詰まりヘリコプターが遠ざかっていく。孤独な女性が人生に疲弊し肉体一つで放浪する『冬の旅』との二本立てなら最高。