やまもとしょういち

DENKI GROOVE THE MOVIE? 石野卓球とピエール瀧のやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

2.4
この監督は本当に「視点」を持ってなく、音楽に対する理解もないということがモロに出てしまったケースだなと感じました。

「電気グルーヴとは何者か?」なんて馬鹿げた言葉を使って映画を作るなんて、本当に彼らに対して失礼としか言いようがない。そんな安っぽくて中身のない言葉を使わずに描き出してみせるのが、ドキュメンタリーという表現手法の醍醐味のはずなのに。

百歩譲って、そのひとつの答えにたどり着くことができなかったとしても、「俺の見た電気グルーヴとはこうである」という視点くらいは少なくとも提示してほしいと思った。自分は電気のマニアではないけれど、この映画は、音楽雑誌の発言の寄せ集め以上でも以下でもないと言い切れる。テクノやヒップホップというものに対して、電気グルーヴにはどのような文化的功績があるのかが全く伝わってこない。ただの記録映像。ドキュメンタリーは記録映像ではない。

あの時代を共に生きた人にしかわからない「何か」がきっと存在しているはずなのに、この監督はそれを見過ごしてしまっていたのだろうと思わせられてしまう。それは小山田圭吾の発言が「あの時代は海外レーベルから出してましたよね」みたいな薄っぺらな誰でも知ってるような言葉だけだったことに表れていて、そういう言葉しか引き出せてない人間が電気グルーヴの25年のドキュメンタリーを形にできるはずもないわけで。

「ドキュメンタリーを撮る」ということは、俺がこの対象を再定義するんだというある種独善的なまでの熱量、それと対極にある、過去や歴史に対する敬虔な眼差しとその絶対性に対する疑いの両方が存在している必要があると思うんですが、この映画にはそれすらない。いい素材は揃っていたはずなのに、監督が無能だったことだけが際立った映画だった。電気グルーヴのふたりや発言者の方々は素晴らしいだけに心から残念。