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エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中にのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

3.5
事件らしい事件は何も起こらず、淡々と丁寧に登場人物たちを追い、その傍らにはいつも音楽がある。というつくりは前作「6歳のボクが、大人になるまで。」とおんなじ。しかしあちらは6歳、こちらは18歳。そらもうやんちゃでイケイケでアホ丸出しで、何から何までやりたい盛りなわけです。野球推薦で進学したはずなのに、やっと練習を始めるのは映画も終盤に差し掛かる頃というでたらめぶりが最高に最低でした。

後半にヒロインのジョニ・ミッチェル好きが判明するあたり、すわ脳筋vsアートの小競り合いが勃発するのかと身構えましたがそんなことはなく、そもそもリチャード・リンクレイター監督自身が野球推薦経験者なのですね。60年生まれの監督が80年の3日間を描く、ってことはまさしく当時の追体験なのですよね。ディスコもパンクもカントリーも全部まとめてかかってこい、いやこっちから飛び込んでやる、ていうハイブリッド感、コステロとかカーズとかいう台詞にもいちいちぐっと来ました。何もかも全部、好きなままでいていいんだ。やったね!

ただ、これ、一歩引いてよく考えてみると強豪校の野球部員、すなわちスクールカースト最上位の選ばれし者たちの話なわけで、描きようによってはいくらでもいけすかない鼻持ちならないクソガキどもになるんですよね。にもかかわらず、それぞれの個性が見えてくる最終盤あたりにはすっかり情が移ってしまってるこの感じ、そこへもってきてあのエンドロールとは何とも心憎い演出だなあと思いました。よかった。
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