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システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたいのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

3.5
どこまでも制御不能のもどかしさがつきまとってひたすら息苦しいのに、時折ふいにタガが外れるような開放感が訪れる不思議な映画でした。

具体的には主人公ベニーが一目散に駆け出す瞬間、彼女の背中を追いながらその視界を追体験するかのようにブレまくるカメラワークとラウドな音楽。あるいは、母親以上に彼女を案じる慈愛に満ちた社会福祉士バファネさんが怒りに満ちた眼差しで漏らす罵り言葉。通学付添人のミヒャが牛飼いに食ってかかる瞬間。さらにはその牛飼いの、キレたベニーにも劣らない口の悪さにシレッとした佇まいだけじゃない実直さ。システムを護る側にいるはずの大人たちがちょいちょい覗かせる人間くささがとても良くて、そうだよな綺麗事ばかりでどうにかできる話じゃねえよな、と深く深く腑に落ちる瞬間が幾度も訪れました。それゆえバファネさんの涙はあまりにも辛く苦しくそれを慰めるのが他でもないベニー本人というねじれがボディブローのように効いたし、あれほど顔に触れられることを恐れていたのにミヒャんちの子にされるがままになってる姿にほろりと来ちゃったし、直後に崖から突き落とされるかのごときショックを受けたわけですよ…!辛い。しんどい。めちゃくちゃ巧い。

全編通してビビッドなピンクと血をオーバーラップさせる演出が効果的にして印象的、青空をバックにヒビを入れてみせるラストカットからのエンドロールとニーナ・シモン。もろもろ忘れられなくなってしまいそうです。
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