ミッキン

ぼくの伯父さんのミッキンのレビュー・感想・評価

ぼくの伯父さん(1958年製作の映画)
4.7
昭和の終わりか、平成の初めか。
うちの母親が森本レオに手紙を書いたと言う。
何かの雑誌に『ぼくの伯父さん』が好きだ、と書いてあったらしい。うちの母親も小さい頃に観て共感したようだ。
待てど暮らせど返事が来ない、と不貞腐れてたのが懐かしい。ネットもSNSもない時代の話である。

しばらくして母親にVHSを買った。数十年ぶりにこの映画を観て泣いているようだった。親孝行したと思った。

時は過ぎ、令和三年。
久しぶり母親に会い、ビデオデッキごと借りた。残念ながら劣化により途中から再生が出来ない。
仕方が無いのでTSUTAYAで借りた。
映像が驚くほど綺麗になっていた。
そして、もうひとつ驚くことが。

ユロ伯父さんが、ジェラールの母親の『兄さん』になっていた。
※ビデオ版は『弟』

まぁ、そんなことはどうでもいい。
とにかくジャック・タチは天才。独特の緩さがたまらない。
家のデザインも、近未来を採り入れた全自動のアイデアも、画面構成もかっこいい。
個人的には『第四惑星の悪夢』を思わせるノイズを強調した演出。終盤の噛み合わない夫婦のやり取りとか最高じゃないか。

ホース会社の秘書がジャンプしながら歩く様子とか、電気にビビるお手伝いとか脇役も見事。

耳に残る音楽の良さは言わずもがな。

ラストシーンで手を握る親子、そして冒頭のシーンに帰結するワンチャン達の走り。
全てがトレビアンである。