茶一郎

バーフバリ 伝説誕生の茶一郎のレビュー・感想・評価

バーフバリ 伝説誕生(2015年製作の映画)
4.3
 2018年、年が明けたと思ったら新年から映画ファンの皆様が「バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!」と連呼するバーフバリ信者になっていたので、慌てて拝見しましたが、なるほどコレは信者になってもおかしくないくらい恐ろしい強度を持った作品です。

 『バーフバリ 伝説誕生』(『バーフバリ』シリーズ・前編)の物語は非常にシンプルで、自らの出自を知らぬまま青年になった主人公ジヴドゥが、辺境の地を抜け出し冒険に出るというもの。実はジヴドゥは大国マヒシュマティ王国の王子だったという事が明かされるまでが、今作『バーフバリ』シリーズ・前編の物語に当たります。
 「出自を知らない主人公」、「田舎を抜け出し王国(都会)へ」、「実はお前の父は王だった」と、『スター・ウォーズ』よろしく非常に典型的な「神話あるある」なお話ですが、この『バーフバリ』が凄いのは物語を語る上での映像・ストーリーの仕掛け・演出が、一々カッコイイ、一々スゴい点にありました。もはや普通のハリウッド映画でやると「やり過ぎ」とも思える凄すぎる要素をマシマシで入れ込む事によって、他では見る事のできない映画快楽が生まれる。このマシマシな感じが、一般の観客の「インド映画」と聞いて連想するような固定概念と見事にマッチしているからこそ、全く「やり過ぎ」がノイズにならないのかもしれません。
 監督のS・S・ラージャマウリ氏の前作『マッキー』も、少々荒唐無稽になり過ぎな一方で、全くノイズにならない程度の配分をしていた事を思い出します。何よりS・S・ラージャマウリ監督のアクション演出は、並みのハリウッド映画が見劣りする程の高い水準のものです。(ちなみに、今作の主人公もヒロインに対してストーカー的な行動をしますが、『マッキー』における主人公はヒロインに2年間付きまといます)

 『スター・ウォーズ』、『300』、『ベン・ハー』、『ロード・オブ・ザ・リング』、既視感が頭によぎりながらも、全編フルスロットルなテンションをスパイスに今までの娯楽作とは何か別のスゴい物に出来上がっている今作『バーフバリ 伝説誕生』。何よりも後半、回想(バーフバリ伝説)を1時間もの時間で語り尽くす展開には度肝を抜かれました。
 S・S・ラージャマウリ監督の前作『マッキー』は、物語の語り手のセリフからストーリーが始まる作品でしたが、もしかしたら監督は「物語を語る」、「神話・伝説を語る」という事に非常に意識的に作品を作っているのかもしれません。そんな監督が作る『バーフバリ』は、きっと1000年後には動く聖書のような、伝説的な作品として見られるのでは、なんて妄想をしてしまいます。
茶一郎

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