茶一郎

LOVE【3D】の茶一郎のレビュー・感想・評価

LOVE【3D】(2015年製作の映画)
3.6
けん怠期カップルへのよくあるアドバイスとして
『付き合い始めの時の気持ちを思い出して』
なんてのがありますが、それを思い起こされる映画でした。

 〜主人公マーフィは、元恋人の母親からの電話を機に、その恋人との出会いから別れを思い起こさせてしまう〜 
 このあらすじを見ると、いわゆる倦怠期恋愛モノ:「アニー・ホール」に始まり「ブルーバレンタイン」に終わる映像群を想起しますが、今作はいわゆるギャスパー・ノエ的な物議を醸す鮮烈で美しい映像と、ある意味『リアル』な恋愛映画になっていました。3D上映に適したなめらかなカット繋ぎで、意外にも目に優しい作り。
 賛否両論あるにせよ、『あの』ギャスパー・ノエ監督の新作、しかも3D作品なので、劇場で観る価値があるというものです。
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 ギャスパー・ノエ作品を見ると、いつも映画が、『時間的な』『映像の』芸術であるということを強く確認させられる気がする。これは、過激で美しい画面が『映像の』にかかり、『時間的な』に、常に時間の経過を意識させられる語り口がかかる。
過去作「アレックス」から『時は全てを破壊する』を、そして、「カルネ」から『たった9秒の快感のために、子は60年苦悩する』を引用すると、全作品で『望まない妊娠』『時間が不可逆であること』をいかに反復している作家か分かる。

 故に、その内容は陰鬱に、反省文のような、ごめんなさい、反省しています、『ごめんなさい映画』がフィルモグラフィを埋めつくしていた。ごめんなさい。セックスは一人でできないし、一人では抱き合えない。
 一方、陰鬱で暗い内容だからこそ、希望の光、今作でいう喪失感を抱えた主人公を訪れるわずかな希望が強調されて見える。完全に突き離すことはしない。

 3D効果も実は巧みに感じて、「アバター」以降の奥行き表現、回想が進むにつれ、その奥行きが明確になるシーンが多い印象。
そしてそして、おっぱいと3Dとが相性が良いように、飛び出すアイツらと3Dとは相性が良いことが、おそらく今作で初めて証明された。
茶一郎

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