ぼぶ

ヒトラーの忘れもののぼぶのレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
4.3
白い砂浜、青い海、広い空…それだけなら最高のビーチなのだけど、そこには何万という地雷が埋まっている。
第二次世界大戦終了後まもないポーランドの海岸に埋められた地雷を除去する任務についたのは、ポーランド軍の軍曹と、ドイツ兵捕虜の少年兵たちだった。

基本、軍曹(もだし、ポーランドの人みんな)はドイツ兵を憎んでるということが冒頭の、引き揚げのドイツ兵をぶん殴るシーンや子供を近付かせないシーンから刷り込まれ、そして少年兵たちも人権無視のひどい扱いを受けながら、作業をしていく。
しかし、作業中に事故が起きたりして、怪我や事故や色々な日々を共に過ごすうちに軍曹の心には変化が起きるが…というお話。

よくもまぁ埋めたなという数の、しかも色んな種類だったり二段重ねだったりという地雷が、あったこと、そしてこうして除去されたという史実を知らなかったので、まずシンプルに勉強になった。
少年の方が、手先が器用とか、若い芽を摘もうとか、色んな思惑もあったのだろうか。

この映画の良いのが、基本は軍曹の心の動きに我々は気持ちを入れ込むのだが、その一方で少年たちにも入れ込むため、苦しさや喜びや希望に絶望などを2倍味わうことができる。

雄大な大地や海辺に対して、小さな人間、そして地雷。
そんな地雷関連のシーンは基本気が抜けなくて、もしやもしやもしや…ふぅー…もしやもしや…わー!!みたいな、下手なアクションやサスペンスよりも、ずっと気を張り詰めることになる。

そして食中毒にサッカー(名前を…!)など色々あれど、最後の終わり方は色んなその先の未来を考えられる形だったのが、少し救いがあった。

少ない音数で淡々と流れていくエンドロールがこれまた、染み込んでくる。
そんなとこにも撮影時に人や動物に危害は加えていないという但し書きがあり、もちろんわかっているけど必要なのか、とここで現代を実感する。

大きな戦争、そして戦争後という視点や数字の中に、こうした人と人の小さな日々があったということが、こうして記録され、広まることに意味を感じる。

だからこそ、邦題に『ヒトラーの忘れもの』という、内容の分かりやすさ先行のような舐めたダサいタイトルが付いてるのが、非常に残念。
せっかく、冒頭の数分間、そして全体を通してのポーランドも、また彼ら少年兵の心の支えであり帰る地としての希望のドイツ・ベルリンも、誰しもにとって大切な『Land of mine』という元々のタイトルなのに。

軍曹の揺れ動く心の名演技も光る、隠れた秀作。
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