シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

レディ・プレイヤー1のシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
4.3
「俺はガンダムで行く」
誰もがのけぞり痺れたであろう、この日本語の台詞(笑)。オタクへの共感に溢れた傑作映画である。スピルバーグのいつまでも若々しいオタク魂には脱帽!
上記の台詞以外にも、惑星ガイギャックス(世界最初のRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)のゲームデザイナーであるゲイリー・ガイギャックスから来ていると思われる。同ゲームは『E.T.』冒頭でも登場する)、聖なる手榴弾、時間を巻き戻せるゼメキス・キューブなどのわかる人にはわかる小ネタも嬉しい。
ジャンル的には、『ソードアート・オンライン』や『サマーウォーズ』なんかと近い話で、これらの作品にカタルシスを感じる人なら、絶対にお勧めである。
また、『世界を作る楽しさ』と『別の自分に成りきる楽しさ』が語られるが、これは、上述のD&Dなど、テーブルトークRPG的(というか、テクノロジーの進化が、テーブルトークRPGの対人コミュニケーション部分を削ぎ落としていたコンピューターRPGを本来目指す先祖に立ち帰らせたのだ)でもある。米国のオタク少年のご多分に漏れず、監督も恐らく熱中したのだろう。本作は、そんなテーブルトークRPGの中でもクロスオーバーな世界観を売りにする『TORG』や『異界戦記カオスフレア』といったゲームにも通じる、ごった煮的な楽しさが映像で見られ、ワクワクさせられる。
またゲーム世代の若者に、映画もゲームと同じぐらい面白いんだぜ!というスピルバーグ監督の熱いメッセージ性が感じられるような、『フェリスはある朝突然に』や『ブレックファスト・クラブ』の引用(ああいう学園生活送ってみたいだろ?とは冴えないオタクにとって悪魔のささやき!)や、『シャイニング』の世界への没入体験は映画ファンも嬉しくなってしまう筈だ。シャイニングはホラーだから見てないという強面大男キャラの「中の人」の正体を知ってみると、なるほどと納得させられるなどの伏線も。
この私のレビュー自体がすでにそうだが、オタクは好きなもののこととなると異様に語りたがる。そして、オタクでもないのにそんなオタクの熱量を偽装する一般人がラスボスだったら、オタクとしてこんなに許せない悪もないのだ。オタクの正義感情の標的として実に秀逸なんですよ、このラスボスの性格設定。
一方、主人公のパーシヴァルやヒロインのアルテミスは、リアルな自分に何がしかの劣等感を抱いているというオタクの典型。その承認要求を気持ちよく満たしつつも、そこからさらに一歩を踏み出すことを求めるストーリー展開は満点でしょう。ラストの火曜日と木曜日の扱いにはニンマリと嬉しくなってしまった。
それにしてもポップカルチャー、オタク文化に関しては米日英が本当に強い、そのことを改めて思い知らされた作品でした。この映画で私が気づいたのは殆どこの三ヶ国の作品ネタでしたね。一角を占める日本に生まれてラッキーだったなと思います。