がんがん

イニシェリン島の精霊のがんがんのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

オスカーノミネート作品を観ようの会


おっさんとおっさんが喧嘩する話なんかな?
と思いきや。

「ミッドサマー」「ガンニバル」の穏やかなやつかな?閉鎖的な村社会の不条理なやつかな?
と思いきや。

あぁ、そうか…これは難解な「シビルウォー」やったんか…ってなりました。


IRAって何やったっけ?どこかで聞いたことある単語や、調べてみよ。「ベルファスト」のあれか…あぁ、そういうメタファーやったんか…となりました。

アイルランド内戦を調べてみると1923年5月24日に終わったとのこと。作中の出来事が1923年4月1日からの描写だったので、まだ1ヶ月以上あの内戦は続いていたということ。

昨日まで友達同士だった者たちが、ある日突然戦わざるを得ない。同じ国に住む者なのに。昨日まで酒を酌み交わしていた仲なのに。

本土でのアイルランド内戦、そしてイニシェリン島でのパードリックとコルムの内戦。作中において大きい事象と小さい事象を比較した構造であるものの、その本質は同じであるということ。

戦争はお互いに大切なものを失う。コルムのあの失った指は、戦争により手足を失ってしまった負傷者なのだろう。パードリックのロバが亡くなってしまったのは、家族を失った者なのだろう。シボーンは生まれ育った土地を捨てそこから出て行くしかない者なのだろう。ドミニクはそんな状況に絶望し自死するしかなかった者なのだろう。

土地を守るため、国を守るためそこに残るしかない者。お互いの正義のために戦い、最後に残るのは悲しみと虚無感しかない。争いは全てのものを奪う。

タイトルにもあるバンシーとはアイルランドに伝わる死を司る妖精のようで。バンシーはマントを羽織った女性の姿をしているようで。あのお婆ちゃんがまさに死の妖精であり、争いは何も生まないぞと警告していたのかもしれない…
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